甲子園の風BACK NUMBER
外野4人シフトを破る群馬の強打者。
前橋工・原澤健人を甲子園で見たい!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byJunji Koseki
posted2013/07/24 11:55
毎試合4人の継投で勝ち進んできた健大高崎を、打力で破った前橋工。この試合で原澤は本塁打こそなかったがしっかり得点機に絡み、同点で迎えた9回には、本塁にヘッドスライディングで突っ込み勝ち越し点を記録している。
7月23日に行われた夏の高校野球、群馬大会準々決勝の第2試合。前橋工対健大高崎は私がこれまで見たことのないシーンが目撃できて少し興奮した。
1回表、前橋工の攻撃で3番原澤健人(3年・三塁手・右投右打)が打席に入ると、健大高崎の守備陣形が怪しく動き出したのである。
三塁手がレフトのポジションにつくと、左翼手がライト、中堅手がセンター左、右翼手がセンター右へとポジションを替えていく。内野では、遊撃手がサードへ入り二塁手がショートへ。つまり原澤のときだけ二塁手が不在になり、外野手が4人になるのである。
その打席で原澤はセンター右に大きな飛球を打ち上げる。ポジショニングによっては右中間を深々と破る長打になってもおかしくない打球だったが、そこには外野手が立っていて何ということもなく捕球した。記録はライトフライになるのだろうか。
こういうシフトを健大高崎が敷くのにはもちろん理由がある。
前橋工の原澤は、今夏2回戦の明和県央戦で大会1号ホームランを放つと、3回戦の高崎東戦では2本のホームランを量産、9対1でコールド勝ちする原動力となっていたからである。
元ラグビー選手だったオーストラリア人の父を持つ原澤健人。
父は学生時代にラグビーをやっていたオーストラリア人のトーマス氏で、この日も息子の活躍を見ようとネット裏に姿を現していた。スポーツ紙によれば180cm、110kgとガッシリとした体つきの人で、この父の血を引き継いだ原澤も見事な体格を誇り、名鑑には183cm、96kgとある。
このはちきれるような肉体から弾き出される打球は超ド級の迫力で、前橋工の練習グラウンドの周囲に張りめぐらされた20メートル以上は優にある高い防球ネットを越えて、隣接するテニス部のコートに打球が飛び込んだこともあるそうだ。その時の打球の推定飛距離は、130メートルとも140メートルとも言われている。
だが、この原澤の評価がそれほど高くない。
日刊スポーツ紙などは7月5日付けの紙面で49地区の投打ナンバーワン選手を紹介しているが、原澤に与えられた評価は「C」であった。