MLB東奔西走BACK NUMBER
「こちらを選んで良かったかな」
田澤純一、手術から3年目の開花。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/07/23 10:31
主に中継ぎとして43試合に登板した田澤純一。ここまで4勝3敗0S、投球回数41回2/3、防御率3.02で前半戦を終える。チームメイトの上原浩治とともに大車輪の活躍だ。
上原のアドバイスで勉強の日々。
調子のいい時は多少コースが甘くとも相手が打ち損じてしまうようなキレがあったのだが、最近はフォームの乱れから、イメージ通りの真っ直ぐが投げられずにいる。傍目から見ていると、精神的な部分でやや萎縮してしまっているように見えて仕方がない。
しかし、現在の田澤には身近に上原がいる。過去に斎藤からいろいろなことを吸収したように、今も精力的に上原から多くのアドバイスを受け、日々学び続けているという。そして前半戦最後の登板となった7月13日のアスレチックス戦で1回2/3を2安打無失点2三振に抑える好投を演じ、不振脱出の糸口を掴んだ。
「まだ完全とは言えないが、徐々に良くなってきていると思う。これからもしっかり準備をして、どんな場面でも1人1人というのをしっかり意識しながらやっていきたいです」
シーズン後半戦は、間違いなく優勝を賭けた熾烈な戦いが続く。これからも上原同様、田澤の出来がチームの成績に大きな影響を与えることになるだろう。決して簡単な挑戦ではないが、そこで培われた経験は間違いなく田澤を更なる高みに導いてくれるはずだ。
「いまのところはこちらを選んで良かったかな」
「隆さんや上原さんと一緒にやれたという部分だけでも、日本でやっているよりもいい経験ができるのではと思うし、今はアメリカの凄い選手たちと一緒にプレーしているわけで、それも他の選手では経験できないこと。今のところはこちらを選んで良かったかなと思っています」
今でもNPBには、ドラフト有望選手の直接メジャー入りを拒む“田澤ルール”が存在し、ある意味日本球界からはまだ裏切り者扱いされている田澤。
日本のプロ野球を経ずに社会人から直接メジャーに飛び込んだため、日本で実績を残した他の日本人選手たちのような知名度も持ち合わせてはいない。
だが世界最高峰の舞台で悩みながらも着実に成長する田澤の野球人生は、素晴らしく充実しているように見える。自分の決断に一片の悔いも感じていないことだろう。