ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
故障でシードを失った丸山茂樹、
テレビ解説で新境地を開拓!
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2013/07/19 10:30
日本プロ選手権日清カップでテレビリポーターとして来場した丸山茂樹。3日目終了後には首位に立った松山英樹と握手を交わした。
2009年に日本ツアーに復帰し、シーズン最終戦を制して3年シードをつかんだ丸山茂樹。だが、その期限切れとなる昨季は、ふくらはぎ、腰、ヒザ、そして左手まで体中に故障を抱えて成績不振に陥り、シード権を失った。
ところが迎えた今シーズン、ベテランの存在はフェアウェイの外で際立っていた。
テレビの解説業の評判がすこぶる良いのだ。
男子ツアーの国内開幕戦・東建ホームメイトカップで解説者デビューを果たした丸山は、その後も日本プロ日清カップ、全米オープンと引っ張りだこ。ブースでの解説からラウンドレポーターまで務め、好評を博している。
「結果論で話す解説者は多くいます。ただ、丸ちゃんは違った。選手が打つ前に『どういったことが起こり得るか』という情報を多く提供してくれる」。丸山人気の秘密をスポーツ中継に約20年携わってきた、あるテレビマンはこう語った。
「ゴルフ中継は、プロが下手に見えてしまうことも多いんです。風やラフの深さ、グリーンの傾斜は映像では伝わりにくい。だから、場面ごとの難しさを丁寧に伝えてもらえると、プレーヤーはもちろん、我々制作側にとっても大きな助けになるんです」
息子や友達に話しているのを、ちょっとフォーマルに。
だが名選手が名解説者になるとは限らない。
「気分次第で、しゃべりにムラが出てしまう選手では起用は難しい。その点でいっても、丸山選手は高いポテンシャルがあると思います」
とはいえ、丸山も現役のプレーヤーだ。裏方に回るジレンマはないのだろうか?
「『自分もそこ(実際の試合)に行きたい』、『羨ましいな』といった気持ちではなかった。テレビの放送って緊張はするけれど面白いなって。一視聴者として、いつもリビングで息子や友達に話しているのを、ちょっとフォーマルにした感じかな。そういうのを息子や友達が『参考になるねえ』って言ってくれていたんだ」
世界トップクラスのジュニアゴルファーでもある愛息の奨王くんを相手に、ロサンゼルスの自宅でゴルフ談義に花を咲かせる。丸山にとっての解説業は、そんな日常の一コマの延長線上にあったのだ。
一方で、現役選手だからこそ、歯がゆい場面もあるという。