セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
野生児テベスが“貴婦人”に電撃加入。
ユーべ10番の重責と大胆4トップ構想。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/07/02 10:30
「セリエAでプレーするのが夢だった」と語るテベス。得点王よりもチームの勝利を優先すると明言した。
品行方正からはほど遠いテベスの10番には賛否両論。
だが、破天荒な言動で知られるテベスは、彼らの後継者としては明らかに異質な存在だ。
ブエノスアイレスの貧民街出身で、「サッカーをしていなければ、麻薬の売人か盗っ人になるしかなかった。ロクな死に方をしなかっただろう」と何度も語っている。
マンチェスターでは常習の交通違反によって、道路清掃の社会奉仕活動まで命じられた。ちなみに、裁判所によって義務付けられた250時間の社会奉仕活動はまだ完遂していない。
待ちに待った大物FW加入で、テベス獲得に沸いたサポーターたちも、まったく予期していなかった10番の譲渡に困惑を隠せない。
「やはり、見慣れたデル・ピエーロ以外の人間の背中に10番があるのは違和感がある」
「テベスで駄目なら他に誰がふさわしいというんだ?」
現地紙のアンケートを見ても、サポーター感情は二分され、賛否両論となった。サッカー界のレジェンドたちを崇める彼らを納得させるには、並大抵の成績では覚束ない。
「10番の責任は背負うが、この番号が重いとは思わない」
周囲の喧騒をよそに、“貴婦人”の懐に飛び込んだ野生児テベスは、入団会見で奔放に語った。
「10番は、俺が『欲しい』と望んだんだ。デル・ピエーロがこのクラブにとって、どんな存在だったかぐらい知っているし、彼の前にもこの背番号をつけていたのは名選手たちばかりだ。10番の責任は背負うが、この番号が重いとは思わない。俺はかつてボカ・ジュニオールで、ディエゴ・マラドーナの10番を受け継いだ男だぜ」
イタリアの名門にやって来ても、テベスには物怖じする理由がない。彼らの目標は一致している。
「スクデット3連覇がまず第一だ。だが、俺はCLでも相当いいところまでいけるんじゃないか、と睨んでる」
これから本格化する追加補強や未知の新布陣3-3-4導入の成否など、王者ユベントスの新シーズンは、見る者の想像をかき立てる要素に満ちている。
1年ぶりに宿主を得た背番号10は、テベスに馴染むだろうか。常勝ユーベと闘将コンテが求めるのは、泥臭く勝利を目指す貪欲さだ。ユニフォームは、身にまとった者の汗にまみれて、初めてその人間のものになるのだ。