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このチームからいなくなるかも……。
清武弘嗣の悲壮なる覚悟と向上心。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/29 08:03
「ブラジル戦は勝ちにいきます」と語っていた清武。日本帰国時には「悔しいです。満足している人はこのチームに1人もいないと思います」と厳しいコメントを残した。
清武弘嗣は、ブラジルで行なわれたコンフェデレーションズカップに悲壮なる決意を持って、臨んでいた。
大会前最後の試合となったドーハでのW杯アジア最終予選・イラク戦では、普段はトップ下を務める本田圭佑が休養のためにスタメンから外れたため、左FWとして清武は先発した。
トップ下に入った香川真司が「清武とはやりやすい」といった言葉通り、前半26分には左サイドで香川とのコンビネーションから、リターンを受けてエリアに進入。相手ディフェンダーの股を狙ったシュートを放ったが、ゴールラインわずか手前でブロックされてしまった。その後も左サイドからチャンスメイクに奔走したものの、後半22分に交代を命じられた。
ピッチを去った清武は下を向いてベンチにさがり、不甲斐なさをかみしめる。試合中それに気づいた内田篤人はわざわざ清武の元へなぐさめにいき、試合後に取材を受けている清武を見つけると、肩をポンとたたいて去って行った。
「清武は俺の中ではかなり良い選手だし、もっと長い時間使われたら面白いのになぁと思うから。もちろん、それは監督が決めることだけどね」
後に内田はそう言って、清武をなぐさめた理由を明かしている。
「俺はこのチームからいなくなるんじゃないかな」
ただ、清武の試合後の感想は違った。
「今日のあんなプレーじゃ全然ダメ。このままでは、俺はこのチームからいなくなるんじゃないかなと思います」
そこまで酷いパフォーマンスだったのかと記者が聞き返すと、こう付け加えた。
「常に思っていますし、そういう風に自分が思わないとダメだと思っているので……」
そもそも、この危機感こそが、清武の原動力だった。
アジアカップ以降、先発メンバーにほとんど変化がない中で、そこに食い込む最右翼が彼であることに異論はないだろう。2011年8月の韓国との親善試合、彼にとってのデビュー戦で2アシストを記録するなど、順風満帆な道のりを歩んでいるかに見えたが、本人の中ではそうではなかった。