サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
このチームからいなくなるかも……。
清武弘嗣の悲壮なる覚悟と向上心。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/29 08:03
「ブラジル戦は勝ちにいきます」と語っていた清武。日本帰国時には「悔しいです。満足している人はこのチームに1人もいないと思います」と厳しいコメントを残した。
大きな重圧と危機感を感じながら決めた代表初ゴール。
例えば、昨年11月のW杯アジア最終予選・オマーン戦。負傷離脱中だった香川にかわり、先発の座を射止めた清武は念願の代表初ゴールを決めた。実は、大きなプレッシャーと危機感のなかで、この一戦を迎えていたことを明かしている。
「それまで試合に出ていたけど、得点できんというのは、前の選手としては致命傷なので。俺の中では、マジで、本当、『このチャンスを逃したらヤバイなぁ』という思いで試合前からやっていたんです。でも、ゴールを決めたら決めたで、また新しい課題が出てくる。あの試合で2点目とか3点目とか、決められたチャンスもあったのに……と思いましたしね」
それでも、イラク戦からコンフェデレーションズカップに向けて、清武は気持ちを切り替えることに全力を注いでいった。実際、ブラジルに入ってからの清武は、極めて前向きに練習に取り組んでいた。
最強サイドバックとの対戦を心待ちにしていたが……。
もともと海外のサッカーの試合をあまり見ない清武だが、こんなエピソードがある。ニュルンベルクの試合日に配られるマッチデープログラム用のインタビューで理想のベストイレブンを問われた清武は、右サイドバックにD・アウベスを、左サイドバックにはマルセロの名前を挙げていたのだ。コンフェデ杯の対戦相手ブラジルの両サイドバックは、サッカーをあまり見ない清武にとっても刺激的な存在だった。そのことを問われると、サッカー少年のような明るい表情に戻って、こう話していた。
「あの布陣、最強でしょ? サイドバックがマルセロとD・アウべスで(笑)。でも、そいつらと次、できますからね! 超楽しみッス!」
そんな前向きな気持ちが反映されたかのように、ブラジル戦直前に発表されたスターティングメンバーの右FWのポジションには清武の名前があった。燃えないはずがない。
しかし、前半早々に先制点を奪われ、それ以上は失点できないと考えていたチームのなかで、効果的な攻撃を繰り出すことは出来なかった。後半3分にパウリーニョにゴールを許し、0-2となった時点で「交代させられるやろな」と感じた。
それでも、後半4分には「イメージ通りだった」と語る、DFラインとGKの間への速いクロスを送り込めたが、それを受けた岡崎慎司のシュートは右に外れてしまった。そして、その直後に前田遼一との交代を命じられることになった。