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チェルシー復帰は本当に「幸せ」!?
モウリーニョが直面する数々の難題。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2013/06/14 10:30

チェルシー復帰は本当に「幸せ」!?モウリーニョが直面する数々の難題。<Number Web> photograph by Getty Images

チェルシーでの監督復帰会見でのモウリーニョ。笑顔……というよりは、複雑な表情が気になる記者会見となった。

「敢えてニックネームを選ぶとすれば、“ハッピー・ワン”だ」。6月10日、チェルシーでの監督復帰会見で、ジョゼ・モウリーニョは言った。

 前回の就任は9年前。続く3年間で、国内タイトルを総なめにした自称「スペシャル・ワン」は、チェルシーのファンからも、イングランドのメディアからも、「選ばれし者」として愛される存在となった。

「信者」の思いは、公的には「解雇でも辞任でもない」とされる退任から5年以上が過ぎても変わっていない。2度目の就任会見当日、スタジアムの外で年配サポーターが着ていたTシャツには、前面に「お帰りなさい、スペシャル・ワン」、背中に「宗教はチェルシー。神はジョゼ」の文字があった。メディアの歓迎ぶりは、300人台の会見出席者数が物語る。クラブの内外に「反対派」が多かったマドリードで、「愛される任地に」とこぼした指揮官の願いは、西ロンドンで叶えられた。

 ところが、「幸せ」を自認するモウリーニョの表情には、思いの外、笑顔が少なかった。

 再就任に当たってのキーワードを繰り返す真剣な表情は、「落ち着き」や「余裕」というよりも、任務遂行の難易度を改めて自分に言い聞かせるかのようでさえあった。

モウリーニョは「安定」という難題をいかに解決するか。

 そのキーワードとは「安定」だ。

 モウリーニョ曰く、オーナーとの共通認識でもあるという。たしかに、自身はタイトル獲得を請け負う「仕事人」的な監督としてクラブを渡り歩いてきた。チェルシーを牛耳るロマン・アブラモビッチは、就任後の10年間で9度の監督交代を敢行した「独裁者」的なクラブ経営者だ。両者は、長期的な安定と無縁のまま復縁の時を迎えた。4年契約を結んだ監督は、チームの世代交代と攻撃的サッカーへの移行を推し進めながら、安定を実現しなければならない。ビッグクラブでチームを仕上げた実績はあっても、育て上げた経験のないモウリーニョは、完成された監督への「最終フェーズ」と位置付けて、復帰先での難題に取り組む覚悟だ。

 では、どのような新チームへと育て上げるつもりなのか?

 2004年当時のモウリーニョは、就任早々のチームミーティングで、センターFWからGKまで、基本とする4-3-3システムの縦のラインにのみ選手名を書いた布陣図を披露している。「チームの背骨だ」との解説付きだったと、最前線に名前のあったディディエ・ドログバは以前に述懐していた。

【次ページ】 4-2-3-1を採用しても、守備陣の駒不足は気掛かり。

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