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チェルシー復帰は本当に「幸せ」!?
モウリーニョが直面する数々の難題。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/06/14 10:30

チェルシー復帰は本当に「幸せ」!?モウリーニョが直面する数々の難題。<Number Web> photograph by Getty Images

チェルシーでの監督復帰会見でのモウリーニョ。笑顔……というよりは、複雑な表情が気になる記者会見となった。

2年連続MVPのマタはチームに不要な「贅沢品」!?

 背骨の一部となる中盤の底には、フランク・ランパードがいるが、モウリーニョの信頼が厚いベテランMFも、攻撃能力が守備能力に勝る。

 ラミレスも、後ろよりも前に意識がいく傾向がある。21歳のオリオル・ロメウは長期欠場から復帰中。レアルでのレンタルを終えたマイケル・エッシェンは、ボランチ兼右SBとしての控えが精一杯の30歳だ。その点、曲がりなりにもDFのルイスは、自信を持つ足技の使い所をわきまえ、堅守の意識を叩き込まれれば、ジョン・オビ・ミケルに劣らぬフィジカルを持ち、奪ったボールの生かし方でミケルを凌ぐ守備的MFとなれる。

 そのミケルを攻撃的MFからコンバートしたのは、他ならぬモウリーニョ自身。即戦力として、マルアヌ・フェライニらの噂の候補から1名を中央に加えた上で、ルイスのボランチ養成を図れれば理想的だ。

 むしろ、2列目のフアン・マタに売却が危惧される。

 25歳の10番は、ファン投票による2年連続MVPにして、プレミアリーグの現役アシスト王。チームには不可欠なはずだが、新監督が「育てがいのある若手」として挙げた中に、ルイスはいてもマタはいない。他に名前の挙がったオスカルとエデン・アザールは、今年22歳の2列目要員にして、モウリーニョが好む「1対1の強さ」でマタを凌ぐ。守備面での意欲に関しても同様。オスカルをトップ下に据え、アザールの逆サイドには運動量のあるラミレスを回し、マタを「贅沢品」として売却して軍資金の一部に当てても不思議ではない。

「何を望むか、彼しだい」とルーニーにも触手を伸ばす。

 軍資金の使い道は、背骨の先端に当たる1トップが最優先だ。

 ナポリとは、既にクラブ間でエディンソン・カバーニの獲得交渉が始まっている。国内のマンUにも、モウリーニョが「何を望むか、彼しだいだ」と意味深に言及したウェイン・ルーニーという獲得候補がいる。代わりに人員整理の対象となるのは、オーナーが、カバーニ獲得の「添え物」として放出を許可したフェルナンド・トーレス。コンフェデ杯終了後の面談を以て、人気FWがチェルシーを去る結果になっても、モウリーニョの判断であればファンも承知するのだろう。

50歳の「熟年監督」は古巣チェルシーをどう変える?

 来季の開幕を前に、モウリーニョが新たな背骨をチームに伝えるとすれば、やはり前回の就任1年目と同じように、リーグ日程表も貼り出して、チェルシーが優勝を決める週末を示すのかもしれない。2度目の就任に際して、「1年目は進化が確認できれば十分。タイトルは2年目だ」と言っているが、前回も、公の場ではタイトル獲得の難しさを口にしつつ、選手たちに告げた第35節で見事に優勝を決めた。

 当時41歳の「青年監督」は、50歳の「熟年監督」として戻った新任地で「安定」を目指すと言う。だが、その内面には、「自分は特別」と気炎を上げた9年前のモウリーニョが潜む。その姿は、目標達成に「レベルの高い努力あるのみ」と強調した直後に垣間見れた。「その先には成功が待っているのが常だ」とさり気なく言ったのだ。

「ハッピー・ワン」の衣を被った「スペシャル・ワン」。

“新チェルシー”を育て上げる難題への本格的な取り組みは、プレシーズンが始まる7月に開始される。

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チェルシー
ジョゼ・モウリーニョ
ロマン・アブラモビッチ
ペトル・チェフ
アシュリー・コール
ジョン・テリー
ダビド・ルイス
ギャリー・ケーヒル
ブラニスラフ・イバノビッチ
フランク・ランパード
セサル・アスピリクエタ
ラミレス
オリオル・ロメウ
マイケル・エッシェン
フアン・マタ
ジョン・オビ・ミケル
エデン・アザール
オスカル
エディンソン・カバーニ
ウェイン・ルーニー
フェルナンド・トーレス

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