スポーツはカタチから入る方なんですBACK NUMBER
革命的な多機能とデザインで時計業界に新分野を切り拓き、今もなお進化し続けるGショック。
text by
奥山泰広&高成浩Yasuhiro Okuyama & Seikoh Coe(POW-DER)
photograph byNanae Suzuki
posted2013/05/29 06:00
アウトドアスポーツ&レジャーに欠かせないスポーツウォッチ。世界のブランドからさまざまなモデルが発売されているが、“タフネス&多性能”では他の追随を許さないカシオGショック。その真価について、改めて語る!
奥山 あの~、突然ナンですが、高さんってGショック持ってます?
高 なんだよ、ホントに突然だな。Gショック? 今は持ってないけど、20年くらい前に、1個買ったっけなぁ。
奥山 1990年代、多彩なカラー&デザインのコレクションが大流行したんでしたっけ!?
高 そうそう! あの時代“ケダモノ”のキャラで編集ギョーカイをぶいぶい言わしてたから、勢いにまかせてカモフラージュ柄のGショックを買ったんだっけ。奥山はイルカ・クジラ派だったんじゃないの?
奥山 いや、実は僕、Gショックを所有したことがないんですよ。
高 あらっ!? 時計に強いファッション・モノ雑誌の編集長だったのに、当時大流行してたGショックを持ってない? こりゃまた意外だね。
奥山 いや、ほら、あの当時はもうひとつ大流行の時計ブランドがあったじゃないっスか。僕はそっちの担当だったもんで……ブランドの担当が違うといろいろ仁義もあるのでねぇ。
高 そうかそうか、そういえばそうだったね。で、なんでまた、今さらGショックなの?
奥山 いや、それがですね、今年でGショックは生誕30周年なんですよ。初代モデルをベースにした記念モデルが売り出されたもんですから、この機会にGショックを初体験してみようかな……と!
高 おっ、初代モデルというと、スクエアケースのだね? ここ最近のスポーツウォッチは皆、流麗なラウンドフォルムになっているから、スクエアなデザインは注目度が高いんじゃないの。
奥山 ところが、あっと言う間に売り切れちゃったみたいで、買えなかったんですよ。相変わらず、Gショック人気は衰えてないんですね。
卓上計算機メーカーが生み出したエポックメイキングな時計
高 今も昔も変わらないGショックの人気の秘密って何だろ?
奥山 1957年創業のカシオ計算機が電子計算機の分野で有名になる中、事業拡大のひとつとして時計開発に着手したのがそもそもの始まり。その後、“壊れない時計を作りたい”という想いから、プロジェクトチームが結成されました。
高 昔はサ、机の高さから落っことして壊しちゃったり、日常防水って言葉をカン違いして、時計したまま風呂に入って全損させちゃうし……(笑)。
奥山 だからカシオは「落下強度10m」「防水10気圧」「電池寿命10年」という、“トリプル10”を開発テーマに掲げたんですよ。
高 知ってるよ。カモ柄のGショックを買ったときに、そのリポート原稿を書くためにGショックの歴史を勉強したもん! トリプル10なんて当時は無謀とも思えるレベルだったから、200以上の試作品を作ったんだよね。
奥山 そうです。特に困難を極めたのが耐衝撃性! いくらボディを強固にしても、強い衝撃を与えると時計の中の機構が壊れてしまったらしい。そこで開発チームは苦心の末に、時計の心臓部を浮かせた構造を発見したとか。
高 「重力(Gravity)の衝撃(Shock)に耐える時計」ということから、『G-SHOCK』とネーミングされたんだよな。
奥山 今を遡ること30年前、1983年のことですね。
高 そうしたエポックメイキングなことを伝統的な時計メーカーではない、計算機メーカーが成し得たトコロに、Gショックの凄さがあるんだね。
奥山 むしろカシオが先進エレクトロニクス技術を得意とする企業だからこそ、Gショックが生まれたと言ってもいいでしょう。