スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
名将もエースFWも今季限りか……。
マラガを熱狂させた勇者たちの苦悩。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2013/05/14 10:30
昨年にはA代表にも招集されたイスコ。マラガの宝と呼ばれる21歳は、今夏の去就が注目される。
刀折れ矢尽きたマラガに追い打ちをかけた“惜別の言葉”。
その翌週、4位争いのライバルであるバレンシアとのアウェー戦は6分間のうちに立て続けに4失点を献上するなど守備が大崩れし、5-1と大敗。続くホームのヘタフェ戦では2-1と競り勝ったものの、翌週には再びアウェーでレアル・マドリーに6-2と大敗してしまう。
「我々のCL出場には現実性がない。1月にモンレアルを売却した時点で既に、我々には出場圏内を目指せるような資金力がなかった」
レアル・マドリー戦後にペジェグリーニが認めた通り、シーズン終了後の6月4日に予定されているCASの裁判結果を待つまでもなく、この時点で来季のCL出場は難しくなった。
同時に、マラガの未来もいっそう不透明なものとなってきた。
カタールの王族であり実業家でもあるオーナーのアル・タニは先日、「みなさんさようなら。君達の愛情はいつも私の心の中にあります」なんて別れのメッセージと解釈できるツイートを行って以降、全くツイッターを更新しなくなった。
地元出身の天才アタッカー、イスコの来季放出は確実か。
彼がクラブ経営からの撤退を決意したのかどうかはまだ分からないが、少なくとも今後もオーナーからの投資が期待できない状況に変わりはない。そうなると、当面はクラブ自らやりくりしていくしかない。だがCL出場に伴うテレビ放映権収入によってチーム力を維持できた今季とは違い、それがなくなる来季はさらなる主力の放出が必須となるだろう。
中でも昨夏放出したカソルラの穴を補って余りある活躍で攻撃の中心に成長したイスコの移籍は確実視されている。
地元マラガ出身であり、バレンシアの下部組織を経て2011年に故郷のクラブへと戻ってきたイスコは、イニエスタを彷彿とさせる柔らかなボールタッチと懐の深いボールキープに加え、ミドルレンジから積極的に狙っていく精度の高いシュート力も兼ね備えた天才アタッカーだ。
今季はリーガでチーム最多タイの8ゴールを決めた上、CLでもゼニトとのグループリーグ初戦で2ゴールを決め鮮烈なヨーロッパデビューを飾ると、ポルトとの決勝トーナメント1回戦でも重要な同点ゴールを決めるなど、ビッグゲームで決定的な仕事を何度も果たしてきた。