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競馬の固定観念を変えた美形の名馬、
エアグルーヴが残した偉大なる足跡。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2013/04/26 11:50

競馬の固定観念を変えた美形の名馬、エアグルーヴが残した偉大なる足跡。<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

1997年の天皇賞・秋。単勝オッズ4.0倍の2番人気で出走したエアグルーヴ(写真左)は、最後の直線で前年覇者の1番人気・バブルガムフェローとの壮絶な叩き合いを制しクビ差で先着。同レース、牝馬として17年ぶりの勝利を収めた。

「名牝」が「名馬」となる道を最初に切り開いた功績。

 グルーヴが勝つまでは、牡馬の層が厚く底力の争いになる2000メートルの天皇賞・秋に牝馬が出てくるなんて無謀だ、強い牝馬ほど時期の近いエリザベス女王杯に回って、確実にタイトルを手にするべきだ、といった見方が普通だった。

 グルーヴは、そうした固定観念を打ち壊してしまった。

 その後、2007年にウオッカがダービーに挑戦して頂点に立ったり、ダイワスカーレットが翌年の有馬記念を勝ったり、ジェンティルドンナが昨年のジャパンカップを制するなどしているが、そんなふうに「名牝」が「名馬」となる道を最初に切り開いたのがグルーヴだったのである。

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 のちの時代の強い牝馬の陣営は、言葉にせずともグルーヴの偉業がどこかにすり込まれ、気づかぬところでグルーヴに背を押された部分もあったはずだ。

 グルーヴとウオッカについて武と話したとき、彼は「今の馬が昔より必ずしも強くなっているとは思わない」と言った。どちらが上かは比較できるものではないし、立場上も言えないだろうが、それでもグルーヴが「あの時代の馬にしては強かった」というレベルの馬ではない、と思っていることは確かだった。

日曜日の天皇賞・春には三男のフォゲッタブルが出走!

 それを別の方法――遺伝した先での強さという形で実証しているのが、産駒の活躍である。

 グルーヴは繁殖牝馬として、'03年、'04年のエリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴ、'12年の香港GI、クイーンエリザベス2世カップを勝ったルーラーシップという2頭のGI馬のほか、'09年のステイヤーズステークス、'10年ダイヤモンドステークスなどを勝ったフォゲッタブル、'12年マーメイドステークスを勝ったグルヴェイグなどを送り出している。

 4月10日に世を去ったハギノカムイオーは「華麗なる一族」と呼ばれた牝系から出た馬だったが、同様に、濃い血のつながりを見せる母系に注目する面白さをあらためて教えてくれてもいるわけだ。

 日曜日(4月28日)の天皇賞・春には三男のフォゲッタブルが出走する。6枠12番。グルーヴが16年前に天皇賞・秋を勝ったときと同じである。

 天国に逝ってからもこんなふうに楽しませてくれるなんて、やはり名馬だ。

 美しく、気高く、愛らしい姿で、天才騎手の繊細なコントロールを受け止めながら、鋼のようなハートで激戦を勝ち抜いたエアグルーヴを知っている、というだけでも誇らしい。

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