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青木と川尻がついにタイトル戦を!!
1分53秒でPRIDE時代に“終止符”。 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2010/07/17 08:00

青木と川尻がついにタイトル戦を!!1分53秒でPRIDE時代に“終止符”。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

良きライバルとして、良きパートナーとして、互いに「PRIDE後の時代」を支えてきた青木真也(写真右)と川尻達也(写真左)は、DREAMのリングで堅い握手を交わした。

 メインイベントのリング上にいた二人が目指したのは勝利だけではなく、時代に終止符を打つことだった。

 7月10日、さいたまスーパーアリーナで開催された『DREAM.15』でライト級タイトルマッチを争ったのは、王者・青木真也と挑戦者・川尻達也。両者の直接対決は、これが初めてである。この試合で彼らが終わらせようとしていたのは“PRIDE後の時代”だ。

 PRIDEと聞いて、ファンが彼らより先に連想するファイターは数多くいるだろう。川尻はPRIDEライト級において常に五味隆典の後塵を拝し続けてきた選手だ。青木のPRIDE参戦はフジテレビによる地上波中継が打ち切られた後である。決して“PRIDE色”が濃厚とは言えない。

 誰もが想像するような“PRIDEファイター”たちは、新たな道を選んだ。ヴァンダレイ・シウバやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップはUFCへ。吉田秀彦は『戦極』旗揚げに参画し、今年4月に引退した。青木、川尻と同じライト級の五味も、『戦極』、修斗と紆余曲折の末、現在はオクタゴンを戦場としている。

 そんな中、青木と川尻は動こうとしなかった。PRIDEのスタッフと行動をともにし、事実上のPRIDE解散イベントである『やれんのか!大晦日!2007』に参戦。翌年からはDREAMの中心選手となった。

2人が繰り広げた“力ずく”と“無茶”。

 DREAMはPRIDEのスタッフが手がける、直接的な後継イベントである。それゆえ、青木と川尻は常にPRIDE時代の興奮とビジネス的成功を引き合いに出され、比較されながら、つまりPRIDEという過去と向き合いながら、DREAMの現在と未来を背負って闘うことになった。

 青木の突き進み方は、力ずくというほかなかった。J.Z.カルバンやエディ・アルバレス、ヨアキム・ハンセンといった世界的にも評価の高い選手たちと休む間もなく対戦。今年4月には、敗れはしたがアメリカに乗り込み、『STRIKEFORCE』のタイトルに挑んでもいる。これだけハイペースでシビアなマッチメイクをこなしてきた選手は、世界でも青木だけだろう。

 一方の川尻も、青木とは違う形でDREAMを背負った。2008年大晦日、K-1ルールで武田幸三と対戦。誰もが予想しなかったKO勝ちを収めると、翌年7月には魔裟斗とのマッチメイクも受け入れた。TKO負けとなったこの一戦だが、記者会見における「俺の拳にはMMAファンの、DREAMファンの思いが詰まっています。その拳を魔裟斗選手に思いっきりぶつけたい」という川尻の言葉をファンは忘れないだろう。彼は競技的にはありえない無茶をすることで過去と闘い、未来を切り拓こうとしたのだ。

【次ページ】 「PRIDEは今日で終わりです」と青木は言った。

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