MLB東奔西走BACK NUMBER
ドミニカの完全優勝がWBCを変えた!?
問題山積の大会に射した一筋の光明。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byAP/AFLO
posted2013/03/21 12:20
決勝戦でプエルトリコを破り、見事世界一となったドミニカ。ドミニカの国全体でその勝利は祝福されたという。
ドミニカ国民の野球に対する情熱と愛が優勝を呼んだ。
2人の証言からも、ドミニカの選手たちが誰1人としてキャンプ期間中の調整気分でWBCに参加していなかったことがわかるだろう。
ではなぜドミニカの選手たちが、ここまで真剣にWBCに取り組んだのだろうか。その底辺にあるものこそ、ドミニカ国民の野球に対する情熱、愛情なのだ。
かつて知人のドミニカ人メディアの1人が「我々は野球を呼吸しながら生活している」と表現してくれたことがあったが、今大会を通じても“野球だけは譲れない”という国民性をヒシヒシと感じることができた。それは球場に詰めかけたファンの圧倒的な応援にも現れている。
実は、準決勝進出を賭けてドミニカと戦った米国チームの選手の1人が、ドミニカの応援に辟易していたと語っていたという。
事実この日の試合は、MLBのプレーオフさえ上回るというサッカーのワールドカップ並みの応援だった。米国を応援するファンの“USA”コールも完全にかき消されてしまうほどのドミニカの声援があり、米国選手には容赦ないブーイングが浴びせられていたのである。
「米国に次いで最多のMLB選手を輩出している国として」
ある意味オープン戦感覚でプレーしていた米国選手からすれば、大会に対する温度差に多少なりとも嫌悪感を抱いた選手がいてもおかしくはない。
「我々は、ドミニカが米国に次いで最多のMLB選手を輩出している国だということを皆に認識してもらいたかった。そのためにも、この大会に勝利するため皆が真剣になっている」
ドミニカ野球連盟の広報を担当するレオ・ロペス氏も、選手ばかりかドミニカの国全体にWBCに賭ける意気込み、熱情が存在していたことを認めている。
優勝が決まった後、チームに対しドミニカのダニーロ・メディーナ大統領から祝福の電話があったという。そして試合後の記者会見でホセ・レイエス選手は、以下のように喜びを語った。
「この勝利はドミニカ共和国のすべてだ。国民みんながこの瞬間をずっと待ち侘びていた。我々はこの勝利のために全身全霊でプレーし、そして実現することができた」