MLB東奔西走BACK NUMBER
選手の気分は「WBC≒オープン戦」!?
米国はいつになれば本気を出すのか。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byMLB Photos via Getty Images
posted2013/03/08 10:45
3月6日に行なわれたコロラド・ロッキーズとの練習試合前の“Team USA”。野球宗主国としての意地を、3度目の正直で見せてくれるのか?
初練習の4日後に本番を迎えるという明らかな準備不足。
だが、過去2回大会とアメリカ代表が根本的に変わらないことがある。それが今回の練習試合で露呈したチームとしての熟成度の低さだ。
いくら志の高い戦える選手を揃えたとしても、野球はいうまでもなくチームスポーツだ。初練習からわずか4日間で本番を迎えるというのは明らかに無理があり過ぎる。候補選手をすべて呼び、最終選考を兼ねたキャンプおよび練習試合を行なってきた日本代表とはWBCに臨む姿勢がまったく違うのだ。
実は、2月18日に1次ラウンド開催地のチェイス・フィールドでアメリカ代表監督としてトーリ監督が記者会見を開いた際、多少意地悪とは思いながらも「準備期間の違いに不公平感を感じないか?」という質問をぶつけてみたのだ。
「すでに分かっていたことなのだから、そういうものだと考えてやっていくしかない。開催時期もこの時期しか適当ではないので、これも仕方がない。ただし今年は各チームのオープン戦開幕が例年より早まっている。先発投手は3試合ほど登板できるし、打者も十分に打席に立つ機会を得られるので、チームとして集まる前に個々が各チームで調整できる時間が今年は用意されている」
本職はMLB機構のベースボール運営担当上席副社長の肩書きを持つだけに、これ以上の答えを導くことは不可能だろう。しかしこの各選手の準備においても、日本とは“雲泥の差”がある。
トーリ監督自身の本心も「WBC≒オープン戦」!?
例えば日本の場合、候補選手はそれぞれに前倒しの調整を行い、最終選考を兼ねた代表キャンプが始まるときにはほぼ臨戦態勢が整った選手ばかりだった。だがアメリカの選手たちは、基本的にキャンプの開始時期が早まっただけで、例年と同じ状態でキャンプインし、例年通りの調整を続けてきただけだ。ある程度試合でプレーできる状態になっているとはいえ、あくまでキャンプ中のオープン戦の域を超えてはいないのだ。だからこそラウンドごとに先発投手の球数制限が設定されているわけだ。
優勝を狙いにいくと公言しながらも、トーリ監督も実情はWBCをオープン戦の延長上だと考えているようだ。彼のこんな発言からも窺い知れる。
「昨年のウィンターミーティングで選手招集に関してGMたちに、我々の目標は選手たちを預かった時よりもより状態を上げてチームに戻すことだと説明している」
つまり選手を預かってWBCを戦いながら、大会終了後には選手たちをシーズン開幕に臨める体調にして各チームに戻したいということだ。その考え方はオープン戦と何一つ変わっていない。