プレミアリーグの時間BACK NUMBER
“マンチェスター時代”の到来はまだ?
プレミア前半戦総括&ベスト11。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/12/27 10:31
11月、第14節のウェストハム戦で開始早々ゴールを決めたファンペルシ(左)に駆け寄るルーニー。第18節までに二人で19得点を記録し、リーグ随一の攻撃力を誇っている。
4位争いの本命トッテナムの課題は、終盤の失点癖解消。
4位争いの本命はトッテナム。新監督のアンドレ・ビラスボアスは、1トップで先発起用を続けて、ジャーメイン・デフォーを調子の波に乗せると、続いて、エマニュエル・アデバヨールとの2トップ採用に踏み切る柔軟性も見せた。課題は終盤の失点癖解消。ラスト10分間での失点による計9ポイントのロスがなければ、トッテナムは、5位ではなく2位で12月を迎えているはずだった。改善への希望は、後半戦を前にアキレス腱が癒えた、スコット・パーカーの戦列復帰。集中力の塊のようなボランチは、実戦で自身のコンディションを高めながら、チームの守備を引締めるはずだ。
アーセナルでも、4位争い参戦に向けて、中盤の底にアブ・ディアビの復帰が待たれる。ディアビが攻守にダイナミックな活躍を見せた序盤戦は、ファン・ペルシ放出による前線の穴ではなく、攻撃集団らしからぬ後方での堅守に世間の視線が集まった。しかし、マンCのヤヤ・トゥーレとも比較され始めていたMFが9月末に負傷すると、翌月にジャック・ウィルシャーが待望の戦線復帰を果たしても、中央の弱さを隠せなくなり、容易にはトップ6の境界線を越えられなくなってしまった。
「脱出王」レドナップは、どん底のQPRを救えるか?
前半戦の大半を10位以下で過ごしたリバプールが対戦相手に与える威圧感は、開幕節でのマンU戦勝利を皮切りに例年にない好スタートを切ったエバートンや、集団としての力を武器に躍進が目立つWBA(ウェスト・ブロムウィッチ)など、前半戦でトップ4も経験した第2グループ勢を凌いでいるとは言い難い。
夏の補強不足で、得点はルイス・スアレス頼み。中盤の顔ぶれは、ショートパス志向のブレンダン・ロジャーズ新監督の下、持ち味を生かせず不完全燃焼気味のスティーブン・ジェラードを除けば、揃って小粒。守備の局面での強度不足は、ホームでのアストン・ビラ戦、パワフルなクリスティアン・ベンテケに、チームの全得点に絡む2ゴール1アシストを許して今季3敗目を喫した第17節に代表される。
一方、リーグ下方の残留バトルでは、開幕16試合勝ち星なしという、不名誉なプレミア新記録を樹立したQPRの運命が興味深い。
常識的に考えれば降格は避け難いが、11月に新監督となったハリー・レドナップは、巧みな人心掌握術で、瀕死の集団にも士気を蘇らせる名モチベーターだ。事実、レドナップ体制は、3試合連続の引分けで敗戦を免れ、4試合目の第17節に白星を上げた。
全2得点を上げた今季リーグ戦初勝利のヒーローは、チーム唯一のチャンスメイカーというよりも、チーム最大のトラブルメイカーという印象が強かった、アデル・ターラブトだった。「脱出王」の異名を取るレドナップには、4シーズン前、やはり勝ち星なしで最下位だったトッテナムを8位に導いた実績もあるが、戦力的に劣るQPRを降格圏外に導けば、過去最大の「脱出劇」となる。