欧州サムライ戦記BACK NUMBER
深刻な不振で見失った居場所……。
カターニャ森本復活に今、必要なこと。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/12/28 10:32
「(Jリーグ復帰も)なくはない」と話している森本。ベンチを温める日々が続いている渡欧7年目の今シーズン、そろそろ次の居場所を見つけるときが来たのかもしれない。
現地紙は「ラストチャンスをふいにした」と酷評。
マラン監督の森本への評価は、あくまで“エースFWベルヘッシオの控え”にすぎない。エースが右足負傷で欠場したペスカーラ戦で先発のチャンスが巡ってくるかと思われたが、やはりベンチへ追いやられた。2番手の座を21歳のセネガル系フランス人FWドゥカラと争う森本の今季リーグ戦出場時間は、18節を終えても4人のFW中最短の計129分(5試合)に留まっている。
カップ戦要員となり、リーグ戦唯一の先発となった14節パレルモ戦でも際立ったプレーを見せることはできず、現地紙からは「おそらくラストチャンスをふいにした」と酷評された。森本自身、覚悟はしていただろうが、出戻りに居場所はなかった。
シチリア島は、もはや彼にとって“第二の我が家”ではなくなった。チームメイトやスタッフ全員がロッカールームに引き上げたペスカーラ戦のハーフタイム、独りグラウンドに残り、真冬の冷たい雨に打たれながらリフティングしていた光景が何よりやるせなかった。
今や4大リーグに所属する“欧州組”で一番の古株となった森本。
森本はカターニャを巣立つ日を誤ったのか。
前年にシーズン通算9得点を挙げ、エース待遇で臨んだ'09-'10年シーズン前半戦に結果を残せず、ステップアップの時機を失したのは確かだ。2006年の夏から欧州組となった彼は、4大リーグに所属する日本人選手中、今や一番の古株だ。18歳で渡欧し、現地のユースチームで、同年代に揉まれることから始めた彼に、前例とかモデルケースとかいったものは存在しなかった。
あらためて過去6年分の取材メモを読み返してみた。
闘将ゼンガに率いられた'09年の春、「3年先、自分がどこにいるかわからない。ただ、どこでプレーしようが、点が取れれば僕にとっては幸せ」と言っていた。無垢な言葉は、漠然としている。