欧州サムライ戦記BACK NUMBER
深刻な不振で見失った居場所……。
カターニャ森本復活に今、必要なこと。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/12/28 10:32
「(Jリーグ復帰も)なくはない」と話している森本。ベンチを温める日々が続いている渡欧7年目の今シーズン、そろそろ次の居場所を見つけるときが来たのかもしれない。
12月の寒空にタイムアップの笛が響くと、頭を抱えて目を覆った。年内ラストゲームの第18節ペスカーラ戦に途中出場したカターニャFW森本貴幸は、降格圏にある相手DFたちにてこずり、得点機にも絡めず終い。シュートを1本も打たなかった森本へ同情的な声をかけるチームメイトはいない。カターニャはロスタイムのFKから失点し、1対2で惜敗した。
古巣カターニャへ戻った彼の不振は深刻度を増している。試合後も歯切れ悪く「今日は本当、悔しい」と消え入りそうな声で言った。
絶好調なチームのなか、森本だけが一人取り残されたまま。
今季、カターニャ自体は開幕から好調そのものだ。新監督マランを迎え、チームの中核を占めるアルゼンチン人選手たちのコンビプレーがいよいよ完成の域に達しつつある。肉弾戦に強く高い守備意識を持つエースFWベルヘッシオが軸となり、左右からはバリエントスとゴメスという技巧派のサイドプレーヤーたちが崩しにかかる。パスサッカーの基点である司令塔ローディには、絶品のFKという飛び道具もある。互いに気心知れた守備陣も攻守のセットプレーに滅法強い。
18節を前に、カターニャより上にいたのは、王者ユーベをはじめ、ミラノやローマ、ナポリやフィレンツェといった主要都市の7強のみという好調ぶり。クラブの勝ち点記録を塗り替えるハイペースに全国区でも注目度が上がる。選手たちの鼻息も荒い。ところが、森本だけが一人取り残されたままなのだ。
心中期するものがあったノバーラへのレンタル移籍だが……。
'11年夏に断行したノバーラへのレンタル移籍には心中期するものがあった。数年来のアルゼンチン偏重路線が抗い難いものとなり、カターニャですでに疎外感を感じ始めていた森本は、新天地に並々ならぬ決意をかけていた。序盤戦にインテルを破る金星を挙げるなど期待は高まったが、シーズン中の度重なる故障にまたも泣かされ、やはり飛躍はならなかった。
復帰した古巣の監督交代は毎夏の恒例行事なれど、アルゼンチン重視路線は変わらず。セリエA初挑戦のマラン新監督は、前任のモンテッラ監督(現フィオレンティーナ)の下で躍進した昨季のチームを下敷きにして、開幕から見事なスタートダッシュを決めた。現在の戦い方が後半戦も踏襲されることは間違いない。