F1ピットストップBACK NUMBER
世界中が可夢偉の離脱に「ノー!」。
F1界はスポーツからビジネスへ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2012/12/13 10:30
鈴鹿で日本人最高位タイ記録となる3位入賞を果たした時の可夢偉。この笑顔が再びポディウムの上で見られる日は来るのか……。
メキシコ人ジャーナリストでさえ異議を唱えている!
これでザウバーの2013年のシートは決定したが、これに首を傾げる者は少なくない。
グティエレスと母国を同じくするメキシコ人ジャーナリストのデビッド・サンチェス・オルモスでさえ、次のように語っているほどだ。
「メキシコ人にとっては、来年2人のF1ドライバーを見ることができるわけだから喜ばしいことなんだけど、正直、複雑な心境だよ。だって、可夢偉はとても有能なドライバーであることは、ずっとF1を取材してきた者ならだれもが感じていることだからね。
F1全体にとっては、今回のザウバーの決定はちょっと悲しい結末だったんじゃないかな。いまは可夢偉が少しでも多くのスポンサーを見つけて、2013年もF1を走り続けることを願うだけさ」
ハンガリーのMTVテレビでコメンテーターを務めているゾルタン・スーヨは、さらに強い口調でザウバーの決定を非難する。
「100%反対だね。これは私だけでなく、多くのハンガリー人たちも同様だよ。
だって、うちのテレビ局のウェブサイトにはものすごい数のコメントが寄せられているけど、どれもザウバーが可夢偉を放出したことに対して否定的なものばかりなんだから。常にオーバーテイクを狙うあのキャラクターは、F1には絶対に必要なんだよ。ハンガリー国民を代表して言うよ。幸運を祈っている、と」
可夢偉の問題は、他国のドライバーにとっても対岸の火事ではない。
可夢偉がシートを失って失望しているのは、可夢偉を支持している者だけではない。フィンランド人ジャーナリストのヘイキ・クルタは、今回のザウバーの決定はヨーロッパ人にとっても決して対岸の火事ではないと語気を荒らげる。
「フィンランド人ドライバーも、可夢偉と同じ問題に直面しているからね。ケータハムのヘイキ・コバライネンだよ。もしも、可夢偉とコバライネンが2013年のシートを見つけられずにF1を去ったら、それはF1界にとって大きな損失になる」