曙の名言
正面から真っ向の寄り切りで勝つことしか考えていなかったんだよ。横綱のプライド? そうかもしれない。
曙(相撲)
2012/11/20
平成6年九州場所千秋楽の結びの一番は、14勝0敗の大関・貴乃花と、休場明けでケガの不安が残る横綱・曙との対戦だった。立ち会いで、張り手から左を差し、一気呵成に土俵際に寄った貴乃花。俵に足がかかった曙は、これをこらえると逆に右小手投げを返し、貴乃花は右足一本でかろうじて残った。「僕が下に投げを打って、もし上から体を乗っけていたら、勝負がつくどころか、貴乃花の腕は折れていたはず」と曙が断言するほどの絶好の勝機であったが、横綱のプライドがそれを潔しとしなかった。「正面から真っ向の寄り切り」で土俵際まで追い詰めたが、最後は貴乃花捨て身の右上手投げで土俵下に投げ捨てられた。この優勝で貴乃花は横綱に昇進。「本当にこの頃は、ふたりとも強かったなあ」と、引退後の曙はしみじみと振り返った。
Number570号(2003/02/20)