熱パ!クライマックス劇場BACK NUMBER
首位・日ハムの陰に師弟ドラマあり!
勝負の9月に輝く“栗山チルドレン”。
text by
加藤弘士Hiroshi Kato
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/09/26 12:00
9月17日の札幌ドーム、オリックス戦。試合後、杉谷拳士(左)を出迎える栗山監督。代打起用に見事に応え、貴重な決勝タイムリーを放った21歳の活躍を称えた。
「混パ」の熱狂が続く。ペナント争いも最終章。巨人がダントツの強さでリーグ優勝を成し遂げたセ・リーグとは対照的に、パ・リーグの覇権の行方は最後まで、もつれそうな情勢だ。
9月25日現在、V争いは1位・日本ハムがリードしているが、2位・西武も逆転優勝の可能性を残し、猛追する。3位・ソフトバンクも獅子の尻尾を射程とし、4位・ロッテ、5位・楽天もクライマックスシリーズ進出を決してあきらめてはいない。
そんな中でも、絶対的エース・ダルビッシュ有のレンジャーズ移籍で、開幕前には苦戦が予想された日本ハムが首位を快走している現状は、讃えられて然るべきだろう。就任1年目の栗山英樹監督が選手の個性を見極め、上手に引き出し、ナインが思いを一つに戦い抜いている姿が印象的だ。
ギリギリの勝負が続く9月の首位争いの最中、スターティングオーダーにハタチ前後の若手が名を連ね、スピードとガッツ、フレッシュさでチームの勝利に貢献している姿は、鮮烈としか言いようがない。
混パ、熱パの強力な磁界が、若手の進化を加速させる。
3年目右腕の中村勝、将来の正捕手候補と期待されるルーキー・近藤健介、4年目の元気印・杉谷拳士、同じく4年目の守備で魅せる中島卓也、走攻守3拍子そろう2年目のバットマン・西川遥輝――。
5人とも高卒で即プロ入りし、同世代は大学生だ。まだ鎌ケ谷の2軍施設で経験を積んでいても不思議ではないのだが、成長のスピードは想像以上に、速い。混パ、熱パの強力な磁界が、彼らの進化を加速させているようにも思える。
目先の1勝と、未来への育成。両立が難しい二つの課題をクリアしながら、ファイターズは前に進んでいる。栗山監督の前例にとらわれない、思いきった抜擢が功を奏している格好だ。
優勝争いの真っただ中、9月9日のオリックス戦(京セラD)では上位打線を「1番・西川、2番・杉谷」と並べ、さらには先発マウンドに中村を送り込み、2-0で快勝した。試合後、指揮官に訊ねた。起用した若武者が、重圧とは無縁に暴れまくるとは、監督冥利に尽きる話ですよね――。すると栗山監督は、自らの哲学をこう語ってくれた。
「ハタチだろうが、全然関係ないんだよ。できるヤツはできるし、できないヤツはできない。記者のみんなもさ、1年目から、書けるヤツは書けたでしょ」