詳説日本野球研究BACK NUMBER
西武に流れるエースの系譜を継げ!
“持っている男”菊池雄星の復活。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/09/06 10:31
8月29日の日本ハムとの首位攻防戦で、8回3安打1失点の好投を見せて3勝目を挙げた菊池雄星。球速にこだわらず、4回以降は最速147キロの直球と多彩な変化球を丁寧に投げ分け、無安打に抑えた。
主力の離脱を中堅・若手の底上げでカバーする上位球団。
主力の戦線離脱ということなら西武も負けていない。エース・涌井秀章は女性問題で世間を騒がせたという理由で5月22日に登録抹消(再登録は6月22日)。不動の4番・中村剛也も左肩甲下筋損傷で6月15日から1カ月近く登録抹消となり(再登録は7月10日)、現在も次の主力3人が登録を抹消されている中で首位争いを展開しているのである。
7/ 7 西口文也 (不調)
7/14 片岡易之 (右手首痛)
8/22 栗山巧 (左尺骨骨折)
力のない球団なら、主力にこれだけ故障者、不振者が出れば順位を落とすのが普通である。しかし、西武をはじめパ・リーグの上位球団は中堅・若手の底上げでチームを立て直そうと試み、ある程度の成果を上げている。中堅・若手の顔ぶれとは、以下の選手たちである。
◇日本ハム 谷元圭介 (投手・社会人出身4年目・27歳)
中村勝 (投手・高校卒3年目・20歳)
鵜久森淳志 (外野手・高校卒8年目・25歳)
杉谷拳士 (内野手・高校卒4年目・21歳)
西川遥輝 (内野手・高校卒2年目・20歳)
◇ソフトバンク 武田翔太 (投手・高校卒新人・19歳)
柳田悠岐 (外野手・大学卒2年目・23歳)
◇西武 十亀剣 (投手・社会人出身新人・24歳)
菊池雄星 (投手・高校卒3年目・21歳)
大崎雄太朗 (外野手・大学卒6年目・27歳)
坂田遼 (外野手・大学卒4年目・25歳)
浅村栄斗 (内野手・高校卒4年目・21歳)
メジャー移籍が決定的な中島裕之の後継者は誰だ!?
西武に話を戻せば、シーズンオフに中島裕之がFA権を行使してメジャー移籍するのが決定的なので、それに対応しなければならない。「対応」とは、中島の後継者を誰にするのか、という方向性の決定である。そのための準備と片岡の穴埋めを同時に行なおうとしているように私には見える。これは悪いことではなく、FA制度が導入された'93年以降、選手の流出が常習化しているパ・リーグならではの危機管理体質と言っていい。
驚くのは高校卒1年目の永江恭平がすでに23試合に出場していることだ。私が見た7月30日のオリックス戦では9番・二塁手でスタメン起用され、2打席目を凡退したあとに代打を出されているが、期待の大きさを感じないわけにはいかない。
9月2日には浅村栄斗が今季、二塁手として27試合目の守備に就き、無難に打球を処理していた。高校時代は遊撃手としてプレーし、球団としてもポスト中島の候補に挙げている人材である。ショートにはまだ中島がいるので、今はとりあえず二塁を守らせて、内野手としての勘を鈍らせないようにしよう、くらいの感覚で起用しているのだろう。