ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
日本、史上最多38個のメダル獲得!
個人競技で光った「チーム力」の結実。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2012/08/13 12:50
アトランタ五輪での“惨敗”をきっかけに変わった日本競泳陣。「一人で立ち向かっても戦えない」という認識のもと、チーム力を高めていく戦略が今回のメダル11個へとつながった。
レース直前の表情に見えた、チームであろうとする努力。
ロンドン五輪を前に、松田丈志らオリンピックを経験している選手が、初出場の選手に自身の経験を伝える場を設けたのも、チームであることを表しているだろう。
「例えば北島康介も、高校生のみんなと数多く話をしていました。それは北島の成長でもあり、チームを落ち着かせることにつながったのでは。レース直前、いけるなという表情をして落ち着いていた選手が多かったのも、チームであろうとする努力がチーム内でできたからです」(上野氏)
一人では戦えない。そこからスタートした競泳は、土台を築いた上で、躍進を遂げたのである。
また、今大会では競泳に限らず、「支え」に感謝する選手も数多かったように思う。おざなりではなく、心から、周囲の支援へのお礼を口にした。
その一人に、レスリング女子48kg級で金メダルを獲得した小原日登美がいる。
レスリング・小原の金メダルも「小さなチーム」の支えがあってこそ。
彼女の場合、現役に復帰してから、2年以上にわたって、ことあるごとに支援してくれた家族があり、減量のために所属する自衛隊体育学校内、さらにはドクターらが指導にあたり、これまでよりも軽いクラスで戦うための練習メニューを考えてくれたコーチがいた。それぞれの立場からの、懸命のサポートがあった。
それだけの支えがあったのは、小原自身の真摯さがあればこそだ。それとともに、それらの支えがあっての金メダルであったのも確かなところだろう。だから小原は、「みんなを笑顔にしたい」と目標を掲げ、目標が達成できたとき、「みなさんのおかげで」と言葉にしたのだ。
それもまた、ひとつの小さなチーム、チーム力で得たメダルだと言えるのではないか。