W杯紀行 思えば南アへ来たもんだBACK NUMBER
ついにヨハネスブルグへ潜入。
南アW杯のために僕は命をかけてる!?
text by
竹田聡一郎Soichiro Takeda
photograph bySoichiro Takeda
posted2010/05/28 06:00
「ジョバーグはね、一部だけ、ダウンタウンだけは危険だけれど、ほかは全然、安全なんだから」
空港で予約していたタクシーの運転手も、ゲストハウスのオーナーも、ショッピングモールのセキュリティもほぼ同じ内容のことを言った。
だが、というワリには僕が滞在しているeast gateという閑静な住宅地ですら、各家庭の鉄の門扉はいかにも堅牢で、塀は高く頑丈でご丁寧に有刺鉄線まで確認できる。玄関脇には必ずセキュリティ会社のステッカーが貼ってあって、時折、警察車両がサイレンを鳴らして疾走している。安全? この様子から連想できるのは違った言葉なのだが……。
とはいえ、「次回の記事はジョバーグから!」なんて調子良く書いてしまったのでライターとしての責任がある。ジョギングシューズのひもをきつくしめ、100ランドの現金をポケットに入れ、水のペットボトルと「写ルンです」を入れたビニール袋を片手に下げるという“上野公園を散策してるだけですスタイル”で、約4キロ先のスタジアムがあるエリスパーク、できうるならばその先のダウンタウンまで歩いてみることにした。
一見綺麗なヨハネスブルグの街だが、近くで見ると……。
僕の最初の行路は、ブロードウェイ・エクステンションという大通りから、そのまま道なりにキッチーナ・アベニューに入り、エリスパークの東側に到達するルートだ。
住宅地を抜けて、まずはブロードウェイ・エクステンションを西へ。3車線の車道脇にはFIFAのワールドカップの宣伝をしている看板がいくつも出ていて、その奥には美しい芝生の公園が広がり、サッカーボールのオブジェなんか置いてある。パッと見には「おお、いよいよW杯か。きれいに整備されたじゃないか」なんて感想を抱くかもしれないが、あくまでそれは車中からの視線のもので、実はそこをトボトボと歩いている僕はというと「あかんやん!」と感じていたのであった。
歩道はところどころ未舗装で、いきなり途切れていたりする。
広がる芝生にも、よく目を凝らせば奥のほうには見るからに怪しげなホームレスが昼寝してたりする。
典型的な車社会とはいえ、スタジアムに続く幹線道路がこの有様なのはいかがなものか。FIFAの「Joburg is Ready(ヨハネスブルグは準備万端!)」の看板の下にまだ工事途中のレンガが積まれていた風景なんて、気のきいたジョークかと思ったよ! しかし、もう時間もないし、このまま開幕を迎えるのだろうなぁ。