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なでしこ、メダルへの舞台は整った!
“2位狙い”指令の是非を考える。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNoriko Hayakusa/JMPA
posted2012/08/01 12:00
第2戦の先発から7人の選手を入れ替えて臨んだ南アフリカ戦。岩渕真奈(16番)、高瀬愛実(15番)ら初先発を果たしたメンバーは、同時進行のスウェーデン戦の状況もにらみながら試合をコントロールするという難しいミッションを見事にこなした。
試合内容は忘れられても、メダルは永遠に語り継がれる。
常に、全力で戦う姿勢を見せるのが「なでしこ」ということなのかもしれない。だが、五輪ではプロセスや姿勢ではなく、メダル獲得が最優先される。時間が経過すれば試合内容はほとんどの人が忘れてしまうだろうが、メダルを獲得したことは永遠に語り継がれる。頂点までの6試合すべてを全力で、ひたむきに戦うのは姿勢としては有りだが、現実的には不可能である。
なでしこの選手からは、いまもメダル獲得に対するブレは微塵も感じられない。
宮間あやは、佐々木監督の「2位通過発言問題」で一時はナーバスになりかけた選手を尻目に、「外で、いろいろ言われるのは気にならない。私たちはメダルを取りに来ているので」と、強気な姿勢を崩さない。
岩清水梓も今日の試合は「メダル獲得のため」と割り切っていたという。
「こういう状況で試合に出るサブメンバーのことを考えたら、やはり難しいというか、かわいそうだと思えてしまいます。でも、だからこそメダルを取って、あの試合は、このメダルを取るための試合だったんだと言いたいんです」
岩清水は、申し訳なさそうな表情で、そう言った。
準々決勝ブラジル戦からは、いよいよエンジン全開で。
南アフリカ戦は、佐々木監督の狙いがうまくハマった。「俺がすべて責任を取る」と、選手を送り出し、ドロー狙いを明確にするなど、メダル獲得の確率をほんの少しでも上げるために、あらゆる手段を尽くした。監督がメダルへの執念を見せれば、選手はそれを意気に感じて試合に集中することができる。もっとも今のチームからは、微妙に燻っているものを感じなくはないが……、メダル獲得という目標のもと、なんとかまとまっている。
「これからは、やるだけなんで」
南アフリカ戦後、宮間は、冷静にそう言った。佐々木監督の策で、舞台は整った。日本時間8月3日(金)、準々決勝ブラジル戦からは、いよいよエンジン全開でメダルマッチを戦っていく。