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ジェフを支える佐藤勇人と山口智。
2人が見据える新たなスタートライン。 

text by

細江克弥

細江克弥Katsuya Hosoe

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photograph byAFLO

posted2012/07/21 08:02

ジェフを支える佐藤勇人と山口智。2人が見据える新たなスタートライン。<Number Web> photograph by AFLO

ジェフユナイテッド千葉がJ2へ降格した2010年から再びプレーしている佐藤勇人。J2初年度は、J1自動昇格となる3位アビスパ福岡と勝点8差で4位。翌2011年シーズンは3位コンサドーレ札幌とは勝点10差の6位だった。

「『俺はこんなもんなのか?』と常に自分に問うてきた」

「自分は『ジェフをJ1に上げる』と言って戻って来たので、それを知っているジェフのサポーターや京都のサポーターには、『アイツ、まだやってんのかよ』と思われて当然だと思います。それが本当に悔しいというか、情けないというか、何て言ったらいいか分からないけど、『俺はこんなもんなのか?』って。その質問を常に自分にぶつけながらここまでやってきました」

 2010シーズンは他を圧倒する十分な戦力を有しながら、最終順位は昇格圏に一歩及ばず4位。理想とする明確なスタイルがあり、それを実現しようとするハードなトレーニングを積んでも結果にはつながらなかった。一転、2年目の2011シーズンはピッチ内の理想論はさておき、とにかく結果だけを追い求めた。しかしまたしても、チームは厳しい現実を突き付けられた。

 その間、佐藤の下には、J1のクラブからも海外のクラブからもオファーが届いた。しかし彼は、強すぎる責任感から信念を曲げられなかった。傍目に見れば、その責任を一人で抱え込んでしまっているようにも映る。

「サポーターの人たちに『一人で抱えなくていい』ってよく言われます。でも、あんな形で一度ジェフから出て、クラブがJ2に落ちて、そんなタイミングでまた戻って来たわけだから……。やっぱり、それも含めて自分が抱えなくちゃいけない」

“昔いたチーム”に復帰ではなく“移籍”してきた山口。

 そうして抱え続けてきた重責を少しずつ下ろせるようになったのが、3年目の今シーズンである。「少し楽になった」と語る佐藤の心境の変化は、こんな言葉からも感じられた。

「今年はむしろ『自分が出ていなくてもいいから勝ってくれ』という気持ちがある。たぶん、J1に上げないといけないという気持ちが強すぎるんだと思いますね。ただ、今年は他のチームで中心を張っていた選手が入って来てくれて、コミュニケーションを取りながらチーム全体のケアができている。だから、少し楽になった気がします」

 そのうちの一人が、山口智である。

 ある日の練習後、クラブハウスで山口を呼び止めた。しかしこちらが「ジェフに戻って来て」と口走ったところで、すぐに「いや」と言葉をかぶせられる。

「僕は『戻って来た』という表現が好きじゃないんです。一人の選手として評価してもらって、戦力として考えてもらって移籍してきたので。“昔いたチーム”というだけで、今はもう、チームも環境も全く違いますから」

【次ページ】 「僕自身ももっと影響力を与えないといけない」

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