ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
濃密な4年間を経て挑む2度目の五輪。
錦織圭は番狂わせの主人公になる?
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2012/07/25 10:30
4月の左脇腹肉離れから約2カ月ぶりの復帰戦となったウィンブルドンでは、日本男子としては1995年の松岡修造以来となる3回戦進出を果たす。同じ会場で行われるロンドン五輪では、日本勢として1920年アントワープ五輪以来1992年ぶりとなるメダル獲得を目指す。
雪辱を期してのロンドン五輪。そんな言い方もできるだろう。
テニス競技の会場は、7月8日までウィンブルドン選手権が開催されていたオール・イングランド・クラブ。今年のウィンブルドンで3回戦に進出した錦織圭は、第9シードのフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)に完敗を喫した。両者のラリーは恐ろしくレベルが高かったが、錦織は対等に打ち合うのが精一杯だった。相手のボールの深さと重さに、持ち前の展開力や緩急を封じられたのだ。
腹筋痛が回復したばかりの錦織は、芝コートの前哨戦を戦わずにウィンブルドンに臨んだ。1、2回戦はポテンシャルにものを言わせて勝ち上がったが、準備不足で戦うにはデルポトロは手強すぎた。
ジョコビッチ(セルビア)を破るなどの濃密な経験を積んで……。
不完全燃焼の悔しさを晴らすには、同じ会場で開催される五輪は絶好の機会だ。
'08年の北京五輪には国際テニス連盟推薦枠で出場し、1回戦でライナー・シュットラー(ドイツ)に敗れた。
'08年といえば、2月のデルレービーチ国際選手権(米国)で18歳にしてツアー初優勝を飾り、世界に「ニシコリ」の名を知らしめた飛躍の年だ。その実績と将来性が評価され、推薦出場で五輪デビューを果たしたが、プロ1年目の若者は実力を出し切れず、全豪準優勝の実績もあるベテランに屈したのだ。
それから4年。
世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破るなど、濃密な経験を積んだ錦織は、22歳の成熟したプレーヤーとして2度目の五輪に臨む。
ウィンブルドン選手権の開幕前に行われた会見で、記者が「五輪では北京の経験が生きる?」と問いかけると、錦織はこう答えている。
「いやもう、自然と身についてきているんじゃないですかね。大舞台も幾度となく経験しているし、一番違うのは、ランキングもそうですし、自信もついているので。前回は推薦出場でしたが、今回は実力でしっかり入れているというのもある」