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<柔道女子48kg級代表の諦めない心> 福見友子 「幾度の挫折を乗り越えて」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2012/07/19 06:02

<柔道女子48kg級代表の諦めない心> 福見友子 「幾度の挫折を乗り越えて」<Number Web> photograph by Asami Enomoto
Number誌の特別連載「LONDON CALLING~ロンドンが呼んでいる~」。
7月27日の五輪開幕に向け、このシリーズを全文公開していきます!


今回は柔道女子48kg級日本代表、福見友子。
同級のライバル・浅見八瑠奈にリードを許していたが、大逆転で代表に選出。
過去、谷亮子に2度勝利しても届かなかった夢を、ついに掴んだ。
Number804号(5月24日発売)では彼女の諦めなかった心の内に迫りました。

 白、3本。

 自分に上がった旗を見ても表情を緩めない。表彰式とテレビインタビューでようやく笑顔を見せた彼女は、大勢の記者を前にして、いつものように落ち着いた表情で答えていく。

――旗判定で勝った瞬間は?

「一本で勝ちたかったという気持ちでいました」

――どのように大会に臨みましたか?

「自分を出したいと。それができてよかったと思います」

――ここ一番で強さを発揮できたのは?

 すると、ふいに涙があふれた。

「弱さを自分でみつめてやってきて……ここまで来ることができてよかったと思います」

 自分がもっとも勝ちたかった相手を倒した。

 5月13日、全日本選抜体重別選手権。ロンドン五輪代表最終選考を兼ねる大会の48kg級を制した福見友子は、涙をこぼした。

決勝での直接対決で2度敗戦。浅見に大きく離された実績。

「どっちが出てもオリンピックでは金メダルが確実な2人でしょう」

 柔道日本代表女子の園田隆二監督は、いつも福見と浅見八瑠奈をこう評してきた。

 成績がその言葉を裏付ける。

 世界ランク1位の福見は2008年の北京五輪後、19の国際大会に出場。'10年のアジア大会決勝で誤審とすら言えない不当な判定で地元中国選手に負けたのを除き、足かけ4年、海外の選手には無敗を誇ってきた。

 対する浅見は世界ランク2位。'10年7月のグランドスラム・モスクワで敗れたのを最後に、9つの国際大会で海外の選手に一度も負けていない。

 そんな実力ある両者がいても、2名出場できる世界選手権とは違い、オリンピックの切符は1枚のみ。2人の対戦成績は4勝4敗と五分。海外の選手への勝率も相譲らない。だが、最終選考大会を前に、浅見がリードし、追うのは福見と位置づけられていた。オリンピックに次ぐグレードの世界選手権で、'09年のみ優勝の福見に対し、浅見は'10、'11年と連覇していたからだ。しかも2年ともに決勝で直接対戦しての浅見の優勝である。「実績」を重んじる柔道の選考を考えれば、その差は容易に埋まらない。

 福見自身、オリンピック代表という目標を一度はあきらめかけていた。

【次ページ】 “すべてを懸けて”臨んだパリ世界選手権での敗退。

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