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<ナンバーW杯傑作選/'02年6月掲載> 日本は燃え尽きたのか。 ~決勝T・トルコ戦、空虚な敗北~
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byMichi Ishijima/Naoya Sanuki/Kazuaki Nishiyama(JMPA)
posted2010/05/19 10:30
日本の選手も必死だったが、方向性がバラバラだった。
アイルランドやパラグアイの選手は、個々の必死さが、同じ方向を向いていた。つまり、チームとして同じことを目指し、同じものを獲得するためにもがいていた。11人の想いと方法論が結集していたからこそ、見る者は強い感動を覚えたのである。
だが、日本の選手たちは、個々には彼らに負けないぐらい必死だったものの、その方向性がバラバラだった。グループリーグでは、ベルギーのミスによってかけられた魔法が選手と監督を陶酔させ、それが劇的な効果を生んできたが、残念ながら魔法が解けた日本は、限りなく烏合の衆に近い集団となってしまっていた。スタジアムに設けられた無意味なほどに大きな陸上トラックの空虚さが、日本の選手の必死さをさらに希薄なものに感じさせたのは事実としても。
「結果はベスト16だったが、素晴らしい歴史をつくることができた。この4年間は私の誇りだ。私を支えてくれた多くの人たちにブラボーといいたい。日本のサッカーは、世界のレベルに達した」
決勝トーナメントとは思えないほどあっさりと終わった試合のあと、記者会見の場に姿を現したトゥルシエ監督は満足げですらあった。確かに、前回大会の3戦全敗を考えれば、今回のベスト16進出は輝かしい快挙である。4年前、「負けてもいいから自分たちのサッカーを」なる滑稽極まりないセリフがまかり通っていたことを思えば、ワールドカップに対する日本人の意識も劇的に変わった。
ベスト16は断じて悪い結果ではない。しかし……。
おそらくは4年後、多くの日本人は再びの決勝トーナメント進出を熱望することになるだろうし、今回に比べればはるかに過酷なその要求が、日本の選手たちを次なる次元へと導いていってくれるのは間違いない。そして、フィリップ・トゥルシエという人物が、日本人の意識を変えるうえで大きな役割を果たしたのも事実である。
だが、何かがひっかかる。
日本の実力を考えれば、ベスト16は悪い結果ではない。断じて、悪い結果ではない。しかし、日本のサッカーにとってはきわめて大きな一歩となる今回の成績に、あまり達成感、満足感を覚えることができないのは私だけだろうか。日本は、日本人の選手は、本当にこの程度の力しか持っていないのだろうか。
ドーハでの敗退に、私は涙を流した。フランス・ワールドカップでのジャマイカ戦が終わった時も、悔しくて涙腺が緩んだ。刀が折れ、矢も尽きてしまい、それでもなお目標に届かなかったことがたまらなく無念だった。しかし、決勝トーナメント敗退を告げる笛が鳴り響いた瞬間に湧き上がってきた想いは、過去のものとはまるで違っていた。
ウソ、だろ?