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再びの八百長問題でセリエAに激震。
ユーロにも大打撃で今後の展開は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/06/06 10:30
ユーロ2012まであと1週間の6月1日、スイスのチューリッヒでロシアと対戦したイタリアは、ミスを多発し、0-3で惨敗した。八百長問題は、10日に行なわれるユーログループリーグ初戦のスペインとの一戦にも影響する恐れがある。
麻薬売買より儲かるサッカー賭博にマフィアが本格参入。
4月に逮捕されたアタランタDFアンドレア・マシエッロの生々しい自白内容も衝撃を呼んだ。昨年夏までの2シーズン、セリエAプレーヤーとして彼はバーリの中心選手だった。11年5月15日、レッチェとのプーリア・ダービーでマシエッロは自殺点を献上し、チームは0対2で敗戦した。
「見返りは5万ユーロ(約500万円)だった。あのオウンゴールはわざとやった」
八百長を持ちかけたとされるのはレッチェの元会長ピエランドレア・セメラーロで、A残留のために30万ユーロ(約3000万円)の買収工作を用意していた。マシエッロは元チームメイトや知己の選手を勧誘・仲介し、幾多の八百長カードを演出したことを自供している。報復や口封じから逃れるため、彼の身柄は現在も秘匿された状態だ。いくばくかの金は得たが八百長に加担したことで、マシエッロは車のキーを回すたびに骨と肉になって吹っ飛ばされる恐怖に怯える日々を過ごしていた。
ダービーマッチで所属チームを“売る”選手がいれば、地下賭博で勝つために、故意に負けるよう選手を脅迫するウルトラス(過激派サポーター)もいる。マフィアを黒幕に持つウルトラス3人を逮捕したバーリ地方検察は「八百長によって“違法賭博で勝つ方が麻薬売買より儲かる”とマフィアが気づき始めた」と強く警告を発している。
八百長に加担した選手でも3年半の謹慎で復帰可能!?
蔓延する八百長を根絶させることはできないのか。
今回の捜査で、あまりに裾野が広がりすぎた事件の全貌究明とスピード解決を同時にクリアしようとしたイタリア検察側は、逮捕者に司法取引を強く勧め、有力な捜査情報を手に入れる代わりに寛容すぎるともいえる恩赦を与えた。
最も厳しい選手個人への求刑は、元アタランタ主将クリスティアーノ・ドニへの「サッカー界から(累計)3年半追放処分」である。しかし、生活に窮するほどの多額の罰金もなければ、処分期間を過ぎれば大手を振ってサッカー界に復帰できるのだ。
「八百長に加担した者には永久追放が望ましい」とするUEFA会長ミシェル・プラティニに同調するイタリア協会も、検察の姿勢に地団太を踏むしかない。