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再びの八百長問題でセリエAに激震。
ユーロにも大打撃で今後の展開は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/06/06 10:30
ユーロ2012まであと1週間の6月1日、スイスのチューリッヒでロシアと対戦したイタリアは、ミスを多発し、0-3で惨敗した。八百長問題は、10日に行なわれるユーログループリーグ初戦のスペインとの一戦にも影響する恐れがある。
ギャンブル狂のブッフォンの軽率さにも非難が集中。
自浄作用が薄ければ、外国からの標的にもされやすい。マケドニアから八百長を仕組んだフィクサーの一人は「イタリアのシーズン終盤には(残留と降格を巡って)何にでも値がつく。金で買えないものはない」とあざ笑う。
当事者である選手の意識にも疑問符がつく。
「もし、ある2チームが互いに引き分けを狙うのであれば、外野がとやかく言うことじゃない。1人の死人より、2人のケガ人の方がマシ」と、2チーム間による故意のドローゲームを容認するかのような発言をした代表主将ブッフォンには批判が集中している。代表の守護神であり、責任のある身ながら、自身のギャンブル癖を隠そうともしない彼は「自分の金をどう使おうが俺の勝手」と軽率な発言を続け、世論の反発を呼んでいる。
だがブッフォン自身が、8年前のユーロポルトガル大会でイタリア敗退の一因になったグループ最終節でのデンマークとスウェーデンのドローに「世界的スキャンダルだろう!」と声を荒げているのだ。
甘い処罰基準と我田引水ぶりが、国内外の信用を失墜させていることに気がつかない限り、イタリアの信頼回復には困難な道のりが待っている。
ユーロでの戦いに違法賭博事件の影響は否めないが……。
ナショナル・トレセンへ警察車両が乗り込んだ日、2人の無名選手がイタリア代表合宿に招待されていた。3部でプレーするシモーネ・ファリーナとファビオ・ピサカーネは、八百長への誘いを毅然と突っぱね、勇気をもって告発したことでサッカー界の誉れとして招かれたのだ。ピサカーネは「自分だけじゃない。多くの選手が同じように八百長の誘いを断ったはずだ」と言を強めた。現実を直視しつつ、下部カテゴリーや若年層への指導徹底など、モアベターの方策を探っていくしかない。
1日、イタリア代表は、ユーロ本大会前の唯一のテストマッチだったロシア戦で、まさかの3失点惨敗を喫した。アッズーリが見せた低調なプレーに事件が影響していることは明らかだった。
前回王者スペイン相手の初戦まで時間はないが、ロシア戦に先だち「サッカー界のためになるのであれば、今回のユーロの参加を辞退してもいい」とすら語ったほど、道徳心の高さで知られる指揮官プランデッリは、悲壮な決意で今大会に臨むだろう。違法賭博事件の処分が下されるのは、スペイン戦翌日の11日だ。