F1ピットストップBACK NUMBER
私が目撃したバーレーンGPの真実。
マスコミ発表と現地体験のズレとは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2012/05/06 08:01
封鎖されている街のはずだったシトラで見かけたF1反対運動の張り紙。
報道におけるバーレーンと現地の実態には乖離がある。
これが意味するものとは何か。バーレーンで仕事をしているイギリス人労働者はこんな指摘をする。
「なんで私のような外国人がこの国に多いと思う? それは働かないシーア派のバーレーン人がこの国には大勢いるからさ。イギリス人よりも働き者のインド人だと、バーレーンの全国民の25%以上となる20万人以上もいるんだよ。
選挙制度に問題があることは私も認めるが、それだけじゃ解決しない問題がこの国にはあるってことさ。スンニ派でもシーア派でもない私から見れば、どっちもどっちだよ。私はバーレーンに5年前から住んでいるが、危険だと思って帰国したことはまだ一度もない。ここは言われているほど、ひどい状態じゃないからね。
今回のF1が政府が国外に向けて国の安定を示すための政治的なイベントなら、デモ活動もF1を利用した政治的な活動。だから、国民の多くがデモ活動を冷めた目で見ているんだ」
たった6日間の滞在。しかも、反対派の人に話を聞く機会は持てなかった私に、この国のことを語る資格はまだないかもしれない。それでも、限られた取材の中で感じたことは、一般に伝聞されているバーレーンと、私が見た状況が大きく乖離していたことだ。
バーレーンGPは終わったが、そのことがいまも私の心を苦しめる。