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順風満帆に見えるシャルケに火種!?
EL制覇に必要なラウールのドラマ性。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/03/23 10:30
EL決勝トーナメント2回戦セカンドレグ、シャルケはホームでトゥベンテに4-1と快勝し、ベスト8に進出した。
ラウールの去就に関して会長と監督の見解に齟齬が。
もう一つが、各選手の去就にまつわる問題だ。
主力の中でも、ラウールとファルファンは、今季終了後に現在の契約が切れることになっている。ファルファンの退団は決定的と見られているのだが、現在の懸念事項はラウールとの契約についてだ。
今年初めから何度も話し合いの場が持たれており、そのたびにメディアを通して聞こえてくる情報は二転三転している。あるときはテンニース会長が「契約延長は間近だ」と言えば、別の機会にはステフェンス監督が「ラウールが残留することはないだろう」と話す。
情報が錯綜しているのは、クラブが1年のみの契約延長を目論んでいるのに対し、ラウール側は2年間の契約を望んでいるために生じる相違に加え、給与の面でも両者の要求には食い違いがあるからだろう。
内田篤人は攻撃の起点となるラウールに信頼を寄せる。
ここまでリーグ戦でも12ゴール(3月18日現在)を決めているラウール。今季は4-2-3-1のフォーメーションのトップ下でプレーすることが多いのだが、ゴール以外の貢献度が非常に高い。例えば、攻撃の組み立て。内田篤人は、こう証言する。
「ラウールいなかったら、俺らはマジで攻撃できないよ。紅白戦をやっても、ラウールのいない方のチームは全く上手くいかないからね」
あるいは、3月15日のELトゥべンテ戦のセカンドレグで見られたように、自らゴールを決めなかったとしても、ゴールに絡む能力が非常に高いのだ。この試合、フンテラールの同点ゴールの場面では左からのクロスに対してラウールがニアサイドに飛び込むことで、相手ディフェンダーをひきつけた。そのおかげでファーサイドに流れたフンテラールはフリーになり、余裕をもってヘディングシュートを決めることが出来たのだ。さらに、オランダ人ストライカーによる2点目はラウールのシュートが相手選手にあたって得たPKによるもの。そして、決勝ゴールとなったチーム3点目も、内田からのパスをペナルティエリアで引き出したラウールがジョーンズに流したことで生まれたものだった。
クラブはフンテラールとの契約更新に躍起になっているが、それでは成功を半分しか保証しないようなものなのだ。ラウールがいるからこそ、フンテラールが輝いているという事実を忘れてはいけない。もちろん、クラブとしては将来的には現在ラウールが務めているトップ下のポジションでホルトビーを起用したいと考えている節があるのだが……。