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候補7人を絞り込んでいく基準は?
男子マラソン、五輪代表選考の行方。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT
posted2012/03/06 10:30
びわ湖毎日マラソンで、前にいた中本健太郎をラストスパートで抜き去る山本亮(写真右)。3桁の番号が記されたゼッケンが、山本が一般参加ランナーであることを表している。
月間1400kmの練習量が山本の好走のバックボーンに。
現在27歳の山本は、中央大学時代、1、3、4年生のときに箱根駅伝に出場。4年生のときには主将を務め、5区で区間3位の好走を見せている。
在学中に「いずれはマラソンへ」と思い描き、卒業して実業団チームのひとつ、佐川急便に入社。地力を蓄えると、マラソンに取り組み始めた。
そして3度挑戦したが、これまでの自己ベストは2009年の北海道マラソンでの2時間12分10秒。
こうした実績から、有力候補とは見られていなかったし、招待ではなく一般参加でもあった。なのに自己記録を3分半近くも縮めて五輪代表争いに加わったのだ。
山本の好走を支えたのは、豊富な練習量だ。
実業団の選手の場合、多くて月に900~1000kmあたりだが、山本は「走る距離は長いほうだと思います」と言うように、月に1200km、多いときは1400kmに達したこともあるという。
「体が丈夫なのが取り柄で、それが最後の粘りにつながりました」
とも言っているが、体が強いからこそ可能な練習量である。
山本を駆り立てたロンドン五輪への執念。
また、今大会に備えてペースの変化への対応など、実戦に即した練習も行なったという。
そして執念も見逃せない。
追い上げの最中、苦しくなると「オリンピック」と言い聞かせたという。それだけ、オリンピックに出たいと必死だったし、大会へ向けての練習にもその気持ちは表れていたはずだ。執念を言いかえれば、「絶対に出る」と自分を信じた強さと言えるかもしれない。