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己のスタイルを貫き通した錦織圭。
アンディ・マリーとの激戦の内幕。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2012/01/26 11:45
試合中、何度かラケットを放り、靴ひもを結び直し、空を見上げ、気持ちの切り替えを図っていた錦織圭。あと少し……が積み重なってストレート負けにつながった
錦織は時折、空を見上げ、途方に暮れたような表情を。
序盤から長いラリーが続いた。
第1セット第2ゲームには、42本に及ぶラリーもあった。このサービスゲームをブレークされ、いきなり0-2となった。マリーのサービスキープで0-3。
1ゲームが遠い。
それでも錦織は果敢にストローク戦を挑んでいった。相手に対応するのではなく、自分からコースを打ち分け、緩急をつけてラリーを支配しようとした。全身全霊を込めてボールを相手コートに送り込んだ。
ところが、これをことごとく切り返されてしまう。
読みの良さと身長190センチの長いリーチで、マリーは質の高いカウンターショットを放つ。決まったと思ったのに、もっと厳しいボールが返ってきた。カウンターだけではない。つないで様子を見ようとすれば、マリーはすかさず攻めてきた。凡ミスはほとんどない。自分がやりたいことをすべて相手にやられていた。
錦織は時折、空を見上げ、途方に暮れたような表情を見せた。
トッププレーヤーは、四大大会では一段とギアを上げる。
第1、第2セットはよく食い下がったが、第3セットは体力と知力を使い果たし、わずか29分で決着した。
3-6、3-6、1-6のストレート負けだった。
世界4位に隙はなかった。
昨年、スイス室内でランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破ったとはいえ、トッププレーヤーは四大大会では一段とギアを上げる。
「正直、まだまだ勝てる気がしない。ああいう選手に勝つには100%以上の力を出さないと難しいと改めて感じました」