青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
プロコーチと共に原点回帰へ。
親離れした石川遼が再び覚醒する時。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTakashi Shimizu
posted2011/10/29 08:01
10代最後の大会となった9月のANAオープンでは予選落ちとなった石川。大会後「自分のスイングがしっくりきていなかった」と振り返った
試行錯誤の積み重ねの中で、石川は混乱していた。
実際に練習を見るまでは佐々木氏にも不安があったという。ジュニア時代と今では石川の体や技術も違う。アマチュアやジュニアに対するレッスンの経験は豊富でも、ツアープロのコーチというのは未知の分野でもあった。ましてや石川は日本のトッププロ。
「果たして自分に見極めができるのかどうか」
それは杞憂だった。むしろ久々に見るからこそ分かる部分があったかもしれない。
ちょうど1年前にテレビマッチで対戦したタイガー・ウッズに影響を受け、石川はスイング改造に取り組み始めた。今年の夏頃にはアイアンの不調をみかねたジャンボ尾崎からアドバイスをもらい、フェースの使い方をスイング改造以前に戻すなど試行錯誤を続けてきた。それでもまだ好不調の差は激しく、目の覚めるようなショットをみせたかと思えば目を覆いたくなるようなひどいミスも出る。
佐々木氏は石川と話をするなかで、積み重ねてきた1つ1つの取り組みが頭の中でこんがらがっているような印象を受けたという。
佐々木氏が最初にかけた言葉は「ニュートラルに戻そう」。
「遼がいろいろなことに取り組んできたのは事実。海外に行けば、そのたびに芝質の違いで影響を受けることだってあるでしょう。それが今はグシャグシャになってかみ合ってない。自分の体がどう動いているのか分からないんじゃないか」
そう感じた佐々木氏がコーチとして、石川に最初に言ったのは「ニュートラルに戻そう」ということだった。
こんがらがった糸をほどいて頭をすっきりと整理させる。早く今季初勝利を挙げたいという焦りから生じる余計な動きを消していく。そこには純粋に遠くに飛ばしたい一心でクラブを振り切っていたジュニア時代に通じるものがあるはずだ。
石川も佐々木氏の言葉にうなずけるところがあった。
キヤノンオープン、日本オープンと佐々木氏を帯同した後、これまでコーチ役を務めてきた勝美さんから「佐々木さんの言うことを遼はどう思う?」と尋ねられて、「お父さんと同じ方向を向いているのでわかりやすい。これからもずっと見てもらいたい」と答えている。これが長期的に佐々木氏を起用していくゴーサインにもなった。