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<独占インタビュー>
A・ゴトビ 「エスパルスの革命は、
まだほんの序章にすぎない」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2011/08/20 08:01
そもそもプロサッカーチームでプレーしたことが無く、しかもUCLAの理学部卒業というエリートでもあったアフシン・ゴトビ監督。13歳の時に起こったイラン革命の余波を恐れアメリカに亡命して以降、アメリカ国籍での人生に変わったという
まだほとんどの人がエスパルスの革命に気付いていない。
――「ゴトビ革命」は軌道に乗ったと考えていいのでしょうか?
ある程度の基礎はできたかもしれないけど、まだ道の途中、始まったばかりだよ。
細かなことで言えば、私は練習グラウンドの壁をオレンジ色に塗り、選手やファンにクラブとの一体感を感じてもらう。ヨーロッパのチームのように、クラブハウス内にスタジアムやファン、過去に活躍したOBの写真などをあしらって、伝統あるクラブの一員なんだという誇りと自覚を持たせるといったこともやっている。
フィットネスのマシンを最新鋭のものにしたり、メディカルルームから雑誌や漫画を全部なくしたのも同じだよ。治療に専念するというのもプロの仕事の一つだからね。
選手の意識は確実に変わってきている。小さな事かもしれないが、長期的にはこういうディテールの積み重ねが、大きな違いにつながっていくんだ。
――本物のプロフェッショナリズムを植えつけたいと。
さっき話したデータベースのシステムにしても、日本のクラブでここまで本格的なものを構築したのはエスパルスが初めてのはずだ。たぶん日本のメディアやサッカー関係者は、今、このクラブで起きていることの本当の意味を、まだ理解していないと思う。
監督に就任した時、自分はエスパルスを日本はもとより、アジアを代表するようなクラブにしたいという目標を掲げた。そこには結果や成績だけでなく方法論も含まれている。エスパルスの成功はJリーグにとって、一つのモデルケースになるはずなんだ。
――そういうクラブが出てくれば、日本サッカー界が活性化するだけでなく、日本という国そのものも元気になります。「スピリットアップ!」という、今シーズンのチームスローガンそのものですね。
あのキャッチフレーズは自分の発案じゃなくて、エスパルス側が考えていたものなんだけど、もしかするとスタッフは私が来るのを予見していたのかもしれないね(笑)。どんなに困難な状況になっても、逆にそれをバネにして大きくジャンプアップする。それこそまさに、自分が人生でやってきたことだから。