野球善哉BACK NUMBER
甲子園で監督の世代交代が進行中。
ベテランvs.若手で味わう名勝負。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/08/05 10:30
合言葉は「日本一」、目指す野球は「総合力」という花巻東の佐々木洋監督。チームの中で3人の家族が死亡・行方不明となり、6人は家を流されている。部員たちも「被災地を勇気づけるプレーで日本一になる」と勇む
今では注目カードとなった新潟県vs.東京都の対戦。
ベテラン監督同士の対決で面白いカードがある。
昨春の準優勝校・日大三vs.一昨年夏の準優勝校・日本文理の対決だ。一昔前では「東京vs.新潟」だと、さほどの注目も浴びなかっただろうが、今は違う。日大三・小倉全由監督(54歳)は言う。
「僕が関東一で監督をやっていたころに、新潟の野球のレベルをあげるための一環として招待試合があって、参加させてもらったことがある。勝てないからってことだったんだと思うけど、今はそうじゃないですよね。大井(道夫)監督は新潟の野球を変えましたよね。攻撃的で、甲子園で勝つチームを作られている。ウチのエース吉永(健太朗)が落ち着いて、どんなピッチングをしてくれるのかがカギだと思います」
日本文理・大井道夫監督(69歳)は日大三との対決を歓迎している。
「甲子園でいきなりNo.1チームとやれるんですから、ありがたいことですよ。この子らの力がどこまで通用するのか。通用しなければ、また新潟に帰って、後輩たちが練習すればいいわけだしね。新潟県のレベルのためにも、どういう野球ができるのか楽しみです」
その他にもあるベテラン監督vs.若手監督の好カード。
この他では、智弁和歌山vs.花咲徳栄も好カード。甲子園通算最多勝の高嶋監督に、近年の豊作世代に属する岩井監督が挑む。定年を迎える開星・野々村監督には、柳井学園の若き指揮官、28歳の秋本篤志がぶつかる。唯一対戦相手が決まっていない横浜・渡辺元智監督のブロックには「今年は全国制覇できる力がある」と自信たっぷりで智弁学園を率いる34歳の小坂将商監督や、今治西・大野康哉監督(39歳)ら指導力のある若手指揮官もそろう。
ここに挙げた若き指導者たちは、今後の高校野球界を背負う存在になるはず。ただ、すんなりと優勝することができて一気に世代交代が進むほど、夏の甲子園は甘くない。
ベテランが順当に大会を制して、その健在ぶりを示すのか。それとも、若き指揮官が深紅の旗を奪い、一気に世代交代を進めるのか。
大会は8月6日土曜日に開幕。健大高崎vs.今治西で幕を開ける。