野球善哉BACK NUMBER
甲子園で監督の世代交代が進行中。
ベテランvs.若手で味わう名勝負。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/08/05 10:30
合言葉は「日本一」、目指す野球は「総合力」という花巻東の佐々木洋監督。チームの中で3人の家族が死亡・行方不明となり、6人は家を流されている。部員たちも「被災地を勇気づけるプレーで日本一になる」と勇む
近年において、選手の豊作世代を「'88&'89年世代」とするなら、高校野球監督の豊作世代は「'69&'70年世代」と言えるだろう。実際、ここ数年の優勝監督ならびに甲子園出場監督には、1969年と1970年生まれがやたらと多い。
今春のセンバツ覇者・東海大相模の門馬敬治監督(41歳)をはじめ、近年の優勝監督だと、大阪桐蔭・西谷浩一監督(41歳)、清峰・吉田洸二監督(42歳)らがいる。優勝監督以外でも優秀な監督の名を挙げてみると、唐川侑己を育てて昨夏ベスト4の成田・尾島治信監督(42歳)、'05年の就任から春・夏3度出場の京都外大西の上羽功晃監督(41歳)がいる。今大会の出場校では関西・江浦滋泰監督(42歳)、花咲徳栄・岩井隆監督(41歳)らがその世代に当たる。
この世代をはじめとして、若い監督の活躍が最近は目立ってきている。
今年は'70年代生まれの監督が甲子園出場校で21校までを占めており、'75年生まれの花巻東の佐々木洋監督ら、30代監督の活きの良さも目立つ。
もっとも、ベテラン監督がまったくいないわけではない。
最年長の如水館(広島)・迫田穆成監督(72歳)を始め、横浜・渡辺元智監督(66歳)、智弁和歌山・高嶋仁監督(65歳)、今年5年ぶりに現場復帰した東洋大姫路の藤田明彦監督(54歳)、今大会限りで勇退する開星・野々村直通監督(59歳)、上宮高時代に選抜制覇の経験のある東大阪大柏原・田中秀昌監督(54歳)ら'30年代~'50年代生まれの指導者も、いまだ健在ではある。
今年は例年に比べて序盤からの注目カードは少ないと言われているが、監督対決という視点から見ると、実は見所が多い。
36歳・佐々木監督(花巻東)と62歳・前田監督(帝京)の勝負。
大会屈指の好カードと呼び声が高いのは第2日の第3試合で対戦する花巻東vs.帝京。
2年前、菊池雄星を擁して一昨年夏のベスト4に進出した花巻東は、今や全国区の強豪である。伝統の強豪私学である帝京との対決は1回戦としては贅沢なカード。花巻東の2年生エース大谷翔平と帝京の伊藤拓郎の対決にも注目だが、花巻東の佐々木監督と帝京の前田三夫監督による若手とベテランの采配対決に是非注目したい。
花巻東・佐々木監督は「帝京高校は打撃のイメージが強い。前田監督はベテランの尊敬している監督さんですし、この舞台で対戦できるのはありがたいことです。いかなる困難にぶち当たっても、思いきり立ち向かって、最後まであきらめない姿勢を見せたい」と対決に気合を入れている。
一方の帝京・前田監督は「(花巻東は)1回戦にしたら、手ごわい相手。いいチームを作ってくる。でも、ウチは東東京大会ではバッティングの調子が上がってきていますから、いい投手と当たるのは楽しみですよ。エースの伊藤も状態が良くなってきている」と自信たっぷりに話す。
36歳佐々木監督と62歳前田監督の対決はどのような好ゲームを生むのだろうか。