野球善哉BACK NUMBER
甲子園で監督の世代交代が進行中。
ベテランvs.若手で味わう名勝負。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/08/05 10:30
合言葉は「日本一」、目指す野球は「総合力」という花巻東の佐々木洋監督。チームの中で3人の家族が死亡・行方不明となり、6人は家を流されている。部員たちも「被災地を勇気づけるプレーで日本一になる」と勇む
いつも優勝校に当たって敗退していた関西だが……。
関西vs.九州国際大付の対決も興味深いカードとなった。いや、関西にとっては初戦から選抜準優勝校の九州国際大付と対戦するのは、「また不運なくじをひいた」と言った方が良いかもしれない。
というのも、ここ数年、関西はくじに恵まれていないからだ。
2年連続で出場した今年の選抜では優勝した東海大相模と1回戦で対戦。同級生対決を制した門馬監督はそのまま2度目の優勝監督になった。昨年の春は1回戦で興南に敗退。興南・島袋洋奨と今年もエースとして活躍している堅田裕太の左腕対決は注目を浴びたが、勝った興南はそのまま優勝を果たしている。
“関西に勝てば、センバツ優勝”なるジンクスが囁かれたほど、関西は不運なくじを引き続けているのだ。中国地区では広島の広陵と並ぶ強豪校にもなった関西への、一つの試練と考えていくしかないだろう。
大阪桐蔭も優勝するまでは「くじ運の悪い高校」だった。
そもそも、くじ運の悪さでいえば、過去では大阪桐蔭がそうだった。'08年夏に優勝を果たすまで、大阪桐蔭は常に優勝校に敗れていたのだ。
'05年夏の駒大苫小牧、'06年夏は早稲田実業、'07年春の常葉菊川。その時も「大阪桐蔭に勝てば優勝できる」というような声が上がり、3大会ともレギュラーだった中田翔(日ハム)は、「3大会とも負けたが相手が優勝したということは、自分たちもその位置に近づいていていることだと思う」と語っていたほどだ。苦難を乗り越え、大阪桐蔭は'08年夏に17年ぶりの栄冠を勝ちとっている。
関西にとっても、こうした不運なくじは吉兆と捉えるべきなのかもしれない。
江浦滋泰監督はハッキリとその気でいる。
「ずっと強豪校に初戦で負けている。九州国際大付は投打にレベルが高いですが、強豪に勝つことができれば、勢いに乗っていけると思う。この大きな試練を何とか乗り越えたい」
迎え撃つセンバツ準Vの九州国際大付は若生正廣監督(60歳)が率いている。
「関西はいつもいいチームだよね。試合をしたことはないけど、これを機に仲良くしたいね。ウチとしては、相手どうこうよりも、自分たちの野球をやること。全力を出し切ること、それだけだよ」