MLB Column from WestBACK NUMBER

木田優夫、来季への決意 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph byYasushi Kikuchi

posted2005/10/26 00:00

木田優夫、来季への決意<Number Web> photograph by Yasushi Kikuchi

 現在井口選手が所属するホワイトソックスがワールドシリーズで熱戦を繰り広げている真っ最中だ。なのだが、個人的には前回報告したディビジョン・シリーズで取材活動は終了しており、このコラムも一足お先にストーブリーグに入ろうと思う。

 今回は、シーズンを終え帰国前にLAに滞在している木田優夫投手にインタビューを敢行した。昨年は開幕直前にヘルニア手術、さらにオフにも右ヒジ手術を受けるという苦境から這い上がり、野茂、長谷川両投手とともに37歳になった木田投手に、プロ19年目のシーズンを終えた心境を語ってもらった。

──まずは今シーズンを終え、現在の心境は

 「久しぶりに大きなケガもなく1年を過ごせました。それは良かったんですが、結果的にメジャーに3日間しか残れず、1試合しか登板できなかったので残念だったです」

──メジャー帯同は短かったが、1年通して活躍できたのでは?

 「キャンプ中に思いついて、投球フォームを変えたもので(腕の振りをオーバースローからほぼサイドスローに変更)、開幕直後はその修正をどうずればいいのか解らず打たれすぎたのはあったが、それ以外は悪くなかったんではないですかね」

──突如フォーム改造した理由は?

 「昔からそうなんですが、今年のキャンプでも全体的に悪くはなかったんですが、ちょっとバランスを崩したときに結果がボロボロになってしまった。それを変えていくために、フォーム自体をもっと安定していかないといけないということ。それと真っ直ぐの球速が年齢とともに落ちてきているので、そのためにも他の球種をもうちょっと良くして安定させなきゃいけないというのもあって、その辺で決断しました。

──プロ19年目の大胆なフォーム改造。やはり勇気が要ることでは?

 「人から言われたことなら悩んで決断するまで時間がかかるかもしれないですが、自分でこうした方がいいと確信を持ってやったこと。別に難しいことではないと思います」

──3Aとはいえクローザーとしてオールスターに出場し、チームもプレーオフに進出できた。それなりに内容あるシーズンだった。

 「そうですね。今まで経験できなかったことが経験できました。3Aでも皆優勝目指して頑張ってますし、シーズン終盤に監督から『ずっとお前が最後までクローザーを務め、そして優勝するんだ』と言われたときは悪い気はしなかったですね。そして実際、優勝した瞬間にマウンドにいられたのは嬉しかったです。まあ本当なら、それをメジャーでやらないといけないんでしょうけど(笑)」

──もちろん来年に向けての意欲は衰えていないと思うが。

 「意欲は衰えていないというよりも、辞めようという気がしないです(笑)。まだ辞めないと思います。契約してくれるチームがあれば、ですけど」

──先程も球速が落ちていると話しているが、年齢を重ねたベテランとして野球を続けていく上での難しさはあるのか?

 「現在取り組んでいるんですが、動きの質を変えていかなきゃいけないというのが第一ですね。それから選手としてもそうですし、選手を終えた後に人に野球を伝える機会があったときに、いずれにしても野球を深く考えていかないといけないと思ってます。そういった意味でピッチャーとしての部分でしか考えなかったところがあるので、いろいろな角度から野球を考えていきたいです。選手としてだけでなく、野球人として必要になってくるんじゃないでしょうかね」

──ベテラン選手にとって相撲でいう「心技体」のいずれが重要になってくると思うか?

 「僕個人は『体→技→心』の順番で身に付くと思ってます。身体が出来上がったことでできる技が増え、そして技が増えたことでいろいろな経験をして精神的な部分が磨かれていくと思います。ですが精神的に磨かれた時には体力的にピークを過ぎ、今までの技ができなくなってしまうことがある。この3つのピークが見事に合致した人がスーパースターになれるのだと思います。ですからこの順番で身に付き、その順番で衰えていくのは避けられないと思うので、それぞれをいかに維持していくかですね。さっき話したように、筋力が衰えても動き方が変わってくれば、同じ技術を続けていく可能性はあります。そういったものが大切になってくると思います」

──クレメンスをはじめメジャーでも多くのベテランが第一線で活躍しているが。

 「自分をクレメンスと比較することはないです。ただ僕の中で『こういう動きができればこういう球が投げられる』というのがあります。それができればまだ通用すると実感してるし、その動きもできると思ってます」

木田優夫

MLBの前後の記事

ページトップ