北京五輪的日報BACK NUMBER
厳戒と笑顔の北京。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
posted2008/08/07 00:00
厳戒ムードの一方、ボランティアの丁寧さに驚く 厳戒態勢とこぼれるような笑顔。
北京の地での初日はこんな両極の印象に彩られた。
実例をいくつか。
新疆ウイグル自治区カシュガルで武装警察が襲撃された事件が起きた翌日の5日、北京へと出発した。利用するエア・チャイナのカウンターでチェックインしようとすると、こう忠告を受けた。
「中国はライターの持込みを認めていません。手荷物でも預ける荷物でもライターは禁じられています」
五輪開催のための措置だろうが、驚かずにはいられなかった。2002年のソルトレイク五輪を機に、五輪の警備体制はかわったとはいえ、今までにない措置である。
北京空港から宿泊するメディアビレッジ(記者やカメラマンが宿泊する施設)へ。荷をおろしメインプレスセンターへ向かうバスに乗り込む際、ゲートで荷物検査がある。ここで足止めされた。目薬である。
拙い英語で説明するが、「この液体は何だ」と、いつまでも進ませてもらえない。やがて4人も集まってきた。実演して見せると、それでも疑わしそうだったが、ようやくバスへ乗り込むことができた。バスから外を眺めていると、道沿いに警官がやたら目につく。こちらの英字新聞には、各地からの動員も含め北京には120万を超える警官が配置されているとあったが、素直にうなずけるほどの数であった。
厳重な警備の一方、ボランティアスタッフの対応のよさはこのうえないものだった。ふと立っていると、「何かお困りですか」と即座に寄ってくる。何かを尋ねると、周囲のスタッフを集めて応えようとする。その熱心さとともに、絶やさない笑みは見事というしかない。
それは夏冬あわせてすでに10回近く五輪取材を続けているベテラン記者がもらした感想にも表れていた。
「ここまでメディアに気を遣っている大会は記憶にないですね。本当にスタッフの愛想のよさ、丁寧さには驚かされる。それに、例えばメディアに渡されるキットの中には、五輪の歴史がわかるばかりか今季のランキングも網羅するほど充実しているガイドがあり便利ですが、加えて双眼鏡や小型扇風機、化粧品までプレゼントされる。こんなのは今までなかったですね」
対照的な両面をつなぐのは、おそらく、「何がなんでも成功させる」という決意であり、威信だろう。それはきっと大会全体の色付けにもかかわってくるはずだ。競技の内外で。
たった1日の滞在にして強く印象づけられた北京五輪。開会式まで間もなくである。