セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER
4位を目指すアンチェロッティの賭け。
text by
酒巻陽子Yoko Sakamaki
photograph byAFLO
posted2007/04/16 00:00
「1試合でも多く勝って4位につける」
ミランのアンチェロッティ監督は、開幕から今季の目標をこう語っている。「とにかく4位に入る」とは、欧州屈指の指揮官の台詞とは思えないが、今季は不正問題で勝ち点マイナス8スタート。序盤はチームの調子が上がらず苦境に立たされただけに、目標をチャンピオンズリーグ出場という現実的なものにシフトしたのである。
そんなアンチェロッティは、4月8日、5位エンポリとの試合で、ある「賭け」に出た。
チャンピオンズリーグでバイエルン・ミュンヘンに後半ロスタイムでまさかの同点に追いつかれた直後の一戦。アンチェロッティは、これまで貫いてきた「パスを生かした攻撃」から、「守って勝つ」戦い方に変えたのである。これが当たった。DFボネーラ、カラーゼ、さらには左SBファヴァッリが奮闘し、さらにはこの守備に徹した新しい采配が、中盤の連動を生むという攻撃面での効果ももたらした。結局ミランはエンポリに3−1の快勝。4位パレルモとのポイント差も1に縮め、チャンピオンズリーグ出場圏内に入った。ミランの魅力はパスを生かした攻撃にあったが、攻撃を急ぎすぎるあまり、守備が不安定となる傾向にあった。それを打開したエンポリ戦で、ミランは「守って勝つ」という感覚を、呼び戻したのである。
同じ日、カリアリに1−3と敗れたパレルモの敗因は、守備にあった。若手で構成されたパレルモのウリは、スピードのあるサイド攻撃にある。ところが、個々の選手の突破力は長けていても、「攻守の切り換え」ができていない。攻撃の核だったFWアマウリを負傷で失ったものの攻撃的スタイルを崩さず、攻めにこだわりすぎて守備が疎かになっている。連戦の疲労も重なり、守りの弱さがクローズアップされたのにもかかわらず、いまだ善後策をとれないグイドリン監督は、残念ながらチャンピオンズリーグで指揮を執るのは難しいのではないだろうか。
ミランに敗れたエンポリのカーニ監督は、「組織的なサッカーができていないエンポリは、まだまだチャンピオンズリーグのレベルではないと実感した」と話した。今季のエンポリは、3回4位に浮上した。しかし、欧州カップ戦の経験に乏しく、選手層も薄いいまのエンポリでは、確かに厳しい。スタイルを崩さないグイドリンがパレルモファンの反感を買っているのに対し、カーニの発言はサポーターに親近感を与えている。
リーグ終了まで残り8試合。目標の4位が目前に迫ったミラン。守備に徹する采配が的中したアンチェロッティの表情には、パレルモを追い抜く自信さえ見える。