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【山本ジャパン、最後の挑戦】
3試合で見えた、世界との差 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byTsutomu Kishimoto/PHOTO KISHIMOTO

posted2004/08/23 12:29

【山本ジャパン、最後の挑戦】3試合で見えた、世界との差<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto/PHOTO KISHIMOTO

 33試合目、大会最後の試合にして、ようやく日本らしさが出た試合だった。

 男子日本五輪代表チームはFW大久保のゴールでガーナを1-0で退け、アテネ・オリンピック1次リーグB組を1勝2敗の4位で終えた。決勝トーナメントへはパラグアイ、イタリアが進出した。

 ここ2試合で見られたような気負いも過度の緊張もなく、冷静にファイトする姿が見られた。

大久保と高松の2トップに小野のトップ下、駒野と石川を左右のサイドに置いて、ボランチに今野と菊地を起用し、茂庭、闘莉王、阿部が3バックを固め、GKは曽ヶ端という3-5-2の布陣。石川が右サイドを攻め、今野が2トップに混じって積極的にゴール前に顔を出し、チャンスを作った。これまで練習してきた “チームの形”があった。

ガーナは準々決勝へ進むには日本から勝ち点を取らなければならなかったが、連戦の疲れがでたのか、時折個人技で日本サイドをヒヤットさせる動きをみせたものの、組織的な崩しはなかった。

決勝ゴールは前半36分、菊地からのロングボールを大久保が、GKが前へ出てきたのを見て、その頭上を越えるボールを狙い済まして打った。

 「GKが出てきていたのでループで決めようと思った」と大久保は言った。

 チームは徳永と駒野をケガで欠いて選手のやりくりが苦しかったが、後半、石川に代えて右サイドに松井を投入し、相手の3トップから4トップ気味に出てきていた攻めを、押さえて乗り切った。

 「最後は勝ってよかった。でもチームは敗退したのでうれしくない」、と大久保が言うように、最後の笛がなっても遅ればせの勝利を喜ぶ姿はなかった。

 山本監督は「勝ち点がどうしても欲しい相手とやって勝てたことは意義がある」と話し、 「この厳しいメンタルコンディションの中で、勝ち点3をとったことは、次のW杯へつながっていく」と言った。

 この日、3バックの右でプレーした阿部は、「上(の決勝トーナメント)にはいけなかったけど、失点ゼロで勝ててよかった。このまま終わりにしたくないし、次につなげて行きたい。差はあったし、それをピッチで感じられたのが大きい」と話した。

 松井は、「(オリンピックは)短かった。もっとできたらと思うし、後悔することも多かった。最初の試合に引き分けていたらそのままいけたと思う。悔いの残る試合だった」と振り返り、「1点の重みがわかった。ずっと山本監督が言っていたことだけど、今やっとわかったような気がする」と話した。

 山本監督は、今大会初戦の入り方と初戦前に試合会場で練習ができなかったことは悔やまれると話したが、「選手はこの2年間よく成長してくれた」と、2002年8月に静岡県御殿場でスタートしたチームで戦ってきた選手の労をねぎらった。

さらに、「(決勝までの)6試合を戦えなかったのは残念。でも、パラグアイとイタリアという本当の世界のトップとやることで、日本では見られない(世界との)差が見えた」と話し、ペナルティエリア内での質の差を指摘した。「ここにこなければわからなかったこともある。世界との差はほんのちょっとの差しかない。それをここまでやるんだと、その差を感じてくれたら…」と言った。

彼らのオリンピックは終わった。この3試合から何を感じて、今後それとどう向き合うかでこの大会に出た本当の価値がでてくる。

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