Column from GermanyBACK NUMBER
クローゼがついに移籍か。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byGetty Images/AFLO
posted2006/12/25 00:00
ブンデスリーガは17日で前半戦を終了。ベルダー・ブレーメンが秋の王者となった。そのブレーメンだが、W杯の得点王でエースのミロスラフ・クローゼがついに移籍を決心したと報道され、テンヤワンヤの騒ぎとなっている。28歳のクローゼは、チャンピオンズリーグやW杯での活躍からも分かるように目下絶好調のコンディションが続く。
これまでクローゼはインタビューを受けるたびに、「いつかは海外でプレーしたい」と本音を隠さなかったが、08年6月まで続く契約問題が絡んでいるため、なかなか実行に移せないジレンマに陥っていたものだ。だが契約満了時まで待つとなると彼も30歳になってしまう。この年齢だと移籍は難しい。そこで、人生最初で最後の賭けに打って出たというわけだ。
選手の移籍金相場を紹介している現地のウェブサイトによれば、クローゼの現在の価格は3000万ユーロ(約45億円)。クラブ側は「ミロを失う不利益は計り知れない」として、海外からのオファーには最低3500万ユーロ(約53億円)を要求するとされる。欧州の名だたるビッグクラブだったら、この位の金額は払えるだろうという算段も含んでの言い値だ。
ブレーメンでのクローゼの年俸は270万ユーロ(約4億1000万円)。クラブはエースを引き留めるため、来季の年俸を一気に450万ユーロ(約6億9000万円)に引き上げる用意があることを伝えた。だがこの金額は「税込み」。クローゼ側は「あくまで手取りで同額」を要求する。
ライバルのバイエルンはFWピサロが来季の契約交渉を始めたばかりで、現在の推定年俸500万ユーロ(約7億5000万円)の上積みを狙う。MFハーグリーブスも憧れのマンUへの移籍をちらつかせている。移籍金は3000万ユーロ(約46億円)だ。
こういう数字を見せられると、クローゼが過小評価されていると思われなくもない。出場回数、実績、チームへの貢献度のどれをとってもクローゼはバイエルンの2人より勝る。
大手銀行の元役員が会長を務めるブレーメンは、決して大盤振る舞いをしない堅実経営が持ち味。クローゼを最高のタイミングで放出して得た利益で新たな選手を獲得したほうが賢明だと判断するかもしれない。なにしろ今季は1000万ユーロ(約15億円)の経常利益が見込まれ、チャンピオンズリーグ出場からも莫大な報酬も加わるのだ。建て前は「クローゼは出せない」でも、本音は「金額で勝負されたのでは敵わない」、いや「金額で勝負してくれよ」かもしれない。