オリンピックへの道BACK NUMBER
現役復帰を決意した萩原智子が
“空白の5年間”で得たもの。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT
posted2009/06/21 06:00
山梨学院の職員として復帰したハギトモ。復帰戦で次の日本選手権出場を決めたので、さらに代表入りを狙う
「また戦いたい」。萩原を奮い立たせた北京五輪。
転機となったのは、昨年の北京五輪のことだった。選手たちの泳ぐ姿に、「また戦いたい」という思いが募ったのだ。昨年10月に練習を開始し、臨んだのがこの日だった。
萩原は自由形100mと50mに出場。最初の種目100mは54秒49。自己記録に迫るタイムであり、前半は日本記録を上回るペースだった。
「正直、こんなにいいタイムが出るなんて」
と、本人も驚きを隠せなかったが、見る者にとっても、あらためて萩原の力を知らされる泳ぎだった。
プールを離れたからこそ見えてきたものがある。
レースのあと、こんなことを言った。
「(以前と違い)まわりが気にならなくなりました。前は記者やカメラマンの人が嫌だったんですけど、北京五輪のときに記者の人と一緒にいて、選手のことを応援してくれているんだと分かったんです」
かつての萩原は、もてる力をいかしきれずにいた感がある。だが、心理的な面で変化した今後は、おそらく以前と同じではないはずだ。
自由形の50、100mで挑み続けると言う萩原は、「日本代表に戻りたい」「この夏には日本記録を破るくらいじゃないと」と語る。
大器が、楽しみな選手が、プールに戻ってきた。