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ようやく目覚めた点取り屋。 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/06/22 00:00

ようやく目覚めた点取り屋。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ハーフタイム。ロッカールームに引き上げるアンリの表情は曇っていた。

 前半25分。右サイド後方からのサニョルのクロスにヘディングもゴール上へ。

前半44分。左サイドからのジダンのセンタリングをフリーでヘディングもゴール左へ。

 この日もティエリ・アンリはことごとく決定機を外していた。ジダンをはじめ、チームメイトは何度もスイスDFの隙を突きアンリにパスを送るが決まらない。今大会アンリは無得点、これまでにいくつかの決定機を外していた事で批判も浴びていた。前半はジダンがCKから先制するもヴォンランセンに同点弾を決められ1−1で終了。この試合に勝てばグループ突破が決まるスイス。ゴール裏を真っ赤に染めたスイスサポーターは期待に胸を膨らませた。

 しかし後半31分、アンリはそのスイスの淡い期待を打ち砕いた。交代したばかりのサハからのヘディングの落としをペナルティエリア内で受け、落ち着いてゴールに流し込む。ベンチに走り、仲間と抱き合うアンリ。

 それから8分後。まさにアンリのためのゴールが生まれる。中盤左サイドでボールを受けたアンリはゴールに向けて疾走。ペナルティエリアを中に切れ込み、DFをかわして右足でシュート。プレミアシップで頻繁に見られるゴールシーンがフランス代表でもようやく再現された。このアンリの2点により試合は3−1で終了。スタンドからはフランス国歌“ラ・マルセイエーズ”の歌声も聞こえてきた。

 この試合のマンオブザマッチに選ばれたジダンは試合後、「アンリが点を取ってくれて嬉しい」と語れば、サンティニ監督も「これまでの2試合でジダン、トレゼゲと得点してきたので、今日アンリが点をとってくれたのはチームにとっても重要なこと」と満足気。アンリ本人は「イングランド戦、クロアチア戦と点が取れなかったから嬉しい。今日も前半に2度チャンスを外してしまったけど、チームメイトは僕を励ましながらいいボールを出し続けてくれた」とチームに感謝する事を忘れなかった。

 「改善しなければならない事はいくつかあるけど、予選突破できてとりあえず満足している。次戦のギリシャ?ポルトガルと当たるよりはよかったよ」

 試合後、フランスのエースにはいつもの笑顔が戻っていた。

ティエリ・アンリ

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