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加藤大治郎選手のために今できること。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2003/04/24 00:00

加藤大治郎選手のために今できること。<Number Web> photograph by VEGA INTERNATIONAL

 4月6日に鈴鹿サーキットで開幕したMotoGPは、V・ロッシが優勝、M・ビアッジが2位という結果だった。予想通り、ホンダ勢優勢の中で今季のスタートが切られたのだが、優勝候補のひとり、ホンダの加藤大治郎選手がレース中の事故で負傷し、関係者、ファンに大きな衝撃を与えている。

 事故が起きたのは、鈴鹿の勝負どころでもあるシケインの入り口付近。推定180kmのスピードでバランスを崩し、タイヤバリアに激突、首と頭部を損傷し、意識不明の重体となった。4月9日現在も、意識不明の状態が続き、四日市市内の病院で必死の治療が続けられている。

 大治郎選手は、一昨年、250ccクラスでGP最多のシーズン11勝を挙げて世界チャンピオンに輝いた。昨年は念願のMotoGPクラスに移ったが、2ストローク500cc「NSR500」でシーズンの半分を戦い、後半になって最速4ストローク990ccの「RC211V」で出場という準備不足のシーズン。それでも2回の表彰台で総合7位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。

 今年はシーズンオフから最強最速のチャンピオンマシン「RC211V」で十分な走りこみを行い、得意とする鈴鹿サーキットでの開幕Vはもちろん、日本人初のMotoGP制覇の期待が寄せられていた。ニッポンの期待を一身に背負う大治郎選手の怪我だけに、今回の事故は世界中で大きく取り上げられた。

 事故から数日が過ぎたいまも、事故の原因はテレビカメラがとらえていなかったこともあり、依然として解明されていない。家族の元には、大治郎選手の回復を願うファンの熱いメッセージが、数多く届けられている。日本が世界に誇る天才ライダーの事故だけに、その衝撃は、これまで日本のレース界が経験したことがないほど大きい。

 父・隆さんは、「事故の原因よりも、いまは大治郎を元気にして連れて帰ることだけが願いです」と語る。大治郎選手は、2人の子供と家族の励ましの中でいまも怪我と戦い、家族は“頑張れ大治郎”というファンの声援に、「どれだけ励まされていることか」と感謝の言葉を述べている。いま、ファンに出来ることはひとつ、温かいメッセージを送り続けることではないだろうか。

〔編集部註:加藤選手は4月20日、必死の治療の甲斐なく収容先の病院で亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします〕

加藤大治郎

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