日々の努力でチームと代表の板挟みを解決していった中村。

　しかし、この最悪の状況から中村は這い上がった。相変わらずレッジーナでは出場機会に恵まれなかったが、中村は日々の練習で監督やチームメイトだけでなく、練習場に集まるサポーターを納得させるようなプレーを心掛けた。中村を取材するために訪れた私は、レッジーナのグラウンドで「ナカを使え！」と叫ぶサポーターの姿を見かけたこともある。

　誰かに認めてもらえば、迷いも消える。腐らずに自己を高めたことで、日本代表においても試合勘が影響することはなくなった。そして、シーズン後のアジアカップ中国大会でチームを優勝に導く活躍を見せ、大会MVPに輝くのである。

敢えて困難な道を選ぶ勇気と覚悟。中村はさらに進化する！

　イバラの道であればこそ、中村という男は成長を遂げる。だから彼は今季、Ｊ復帰ではなく、敢えてスペイン挑戦を選んだ。

　移籍が正式に発表される前、彼はこんなことを語っている。

「スペインリーグはサッカーをよく知っている選手が多いし、レベルが相当高い。たとえ自分がレギュラーではなく、サブになったとしても、そこでどんどん吸収していけば自分のレベルは上がっていけると思っている」

　レギュラーを確保するかどうかではなく、レギュラー争いのなかで何を得るのか、が中村のテーマなのではないだろうか。得たものを岡田ジャパンに還元できれば、それがまた日本代表の新たな力になるに違いない。