日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
エスパニョールで苦闘する中村俊輔。
代表での南ア戦にどんな影響が出る?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2009/11/13 10:30
敢えて困難に立ち向かうことで常に夢をかなえてきた中村俊輔。リーガ・エスパニョーラでの活躍がW杯への夢も手繰りよせるはず
岡田ジャパンの大黒柱である中村俊輔が、今季移籍したエスパニョールでレギュラー獲得に苦闘している。
シーズン当初は先発の座を射止めていたが、後半早々での交代が続き、リーグ戦の直近2試合ではベンチスタート。11月1日のバジャドリー戦は出番がなく、8日のヒホン戦でも後半10分からの出場となった。中村に決定的なパスを出させようと、ボールも次第に集まるようになってはきている。スペイン国王杯の4回戦では活躍したが、37歳の青年指揮官ポチェッティーノからまだ完全に信頼を勝ち取れてはおらず、これからが正念場になる。
レギュラー確保が大事な時期に、代表に参加する意図とは?
レギュラー確保のための大事な時期に、中村は一度チームを離れて日本代表の南アフリカ遠征に向かう。当初は10日に合流する予定であったが、11日のスペイン国王杯に出場するチーム事情も考慮しなければならなかったため、岡田武史監督に直接電話して南アフリカ戦前日に合流することを許されている。
中村にしてみれば、自分の置かれている状況がどうであれ、チーム、代表のいずれかを優先するという思いはないはず。エスパニョールのレギュラー確保に全力を注ぐ一方で、今回の南アフリカ遠征がW杯本大会のシミュレーションとなる絶好の機会であることも理解している。しかも来年3月に予定される親善試合まで欧州組は招集されないため、チームの完成度を上げる意味で貴重な遠征になる。強行日程を承知でスペイン国王杯と、長距離移動を伴う南アフリカ戦の連戦を選択したと言える。
所属チームか? 代表か? 過去に苦悩の時期もあった。
「レギュラー獲りの大事な時期であるなら、チームに専念させてもいいのでは」という意見は少なからず聞こえてくる。確かに、レギュラーを確保できなければプレーの質やコンディションの維持が難しくなり、本大会に影響しないとも言い切れない。
だが、経験豊富な中村に対しては、その心配は必要ないと私は考えている。彼は“最悪の経験”を一度味わっているからだ。
イタリアのレッジーナに在籍していた'03~'04年シーズン。
守備重視の戦術を用いた監督の意向によって、前季残留の立役者となった中村は、レギュラーから外されていた。難しい調整を強いられたためにケガも重なり、レギュラー確保が遠のいてしまった。
代表でのプレーにも影響が及ぶ。'04年3月のW杯アジア予選シンガポール戦では途中交代させられ「試合に出ていないから、体が思うように動かない」とショックの表情を浮かべたほどだ。