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内田篤人 “新星”の理由。
text by
浅田真樹Masaki Asada
photograph byMiki Sano
posted2008/02/28 16:14
しかし、同じ10代選手とはいえ、初先発後の起用の仕方を見れば、岡田が、市川と内田を同列に見なしていたとは考えにくい。市川の起用については、「ともかく、自信喪失だけは絶対させてはいけない、と。コイツをここでつぶしちゃいけないというのが、自分のなかでは一番だった」とも話していた岡田だが、今回に関しては、相当に確信のある起用だった、と考えるのが適当だろう。
これまで内田は、順調に年代別代表を駆け上がってきた。昨年のU-20ワールドカップでは、右サイドバックとして4試合すべてにフル出場。左サイドバックの安田理大とともに、攻撃的な両翼はU-20代表の売りとなっていた。
サイドバックに転向したのは、清水東高3年になる少し前のこと。高2の9月には、U-16代表としてアジアU-17選手権に出場しているが、そのときは、まだ右MFでプレーしていた。だからだろうか、単純にタッチライン際で上下動を繰り返すばかりでなく、攻撃を組み立てる能力にも優れている。
今年出場した3試合でも、内田が右サイドからFWの足元へ打ち込むパスが目立った。スピードを生かし、縦への突破を図るばかりでなく、FWへのパスからワンツーを狙って自らもペナルティエリア内へ入っていくなど、多彩なオプションを持っていることは、内田の特徴である。すっかり有名になった3ワードから引用するなら、「接近」においても、「展開」においても存分に能力を発揮できる、プレーの幅を備えている。
昨年はU-22代表として、北京五輪アジア最終予選にも出場。鹿島ではルーキーイヤーでレギュラーを獲得してから、すでに2シーズンが経過した。こうした順調なステップアップが、岡田の確信を裏付ける。
もっとも、さすがの内田も、1月の指宿キャンプでは「結構緊張していた」という。落ち着いて見えるプレーぶりも、試合出場を重ねることで、ようやく「少しずつ心の余裕が出てきたところ」だ。
しかし、周囲の喧騒のこととなると、自身はまるで意に介しない。
「オシムさんだからとか、岡田さんだからっていうのは、あまり関係ない。新聞なんか見ると、結構比較してるけど、そんなの違う人が監督なんだから、同じことするなんて無理だし、どっちが上とかないでしょ。だから、監督が代わったとか何とかじゃなく、僕は一生懸命やるだけですよ」
──これで勝負していく、という自分なりの武器は。
「勝負していくんだっていうよりは、いろいろ勉強したい。足りないところを見つけたいって感じですね」
──まだ対等に勝負するレベルではない、ということ?
「そのレベルではないというか、僕は、ガツガツ勝負するとかって、そういう性格じゃないんでね。アピールするっていうよりは、勉強できたらいいかなって感じ」